【東京工業大学】第4問「場合分けの目的」と「計算の手間」解答・解説[過去問 2023年度]

大学入試数学IIIC
東京工業大学 第4問(2023年度 前期)

\(xyz\) 空間において、\(x\) 軸を軸とする半径 \(2\) の円柱から \(|y|<1\) かつ \(|z|<1\) で表される角柱の内部を取り除いたものを \(A\) とする。また、\(A\) を \(x\) 軸まわりに \(45^\circ\) 回転してから \(z\) 軸まわりに \(90^\circ\) 回転したものを \(B\) とする。
このとき、\(A\) と \(B\) の共通部分の体積を求めよ。

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【解答例】

\(A\) と \(B\) の共通部分は \(xy\) 平面、\(yz\) 平面、\(zx\) 平面に関して対称であるので
\begin{align}
x&\geq0,&y&\geq0,&z&\geq0
\end{align}の部分の体積を考え、その対称性から \(8\) 倍すれば良い。

平面 \(z=t\) で \(A\) と \(B\) の共通部分を切って断面を考えるのために、まず、\(A\) と \(B\) をそれぞれ軸に垂直な平面で輪切りにした断面を見ておく。

これより、\(z\) 座標に関して、\(3\) つの区間
\begin{align}
0\leq t\leq1,\ 1\leq t\leq\sqrt{2},\ \sqrt{2}\leq t\leq2
\end{align}に場合を分けて、平面 \(z=t\) による断面を見てゆく。

まず、\(0\leq t\leq1\) のとき。下図において、
\begin{align}
\begin{cases}
0\leq x\leq \sqrt{4-t^2}\\[3pt]
0\leq y\leq \sqrt{4-t^2}
\end{cases}
\end{align}の正方形 \(S_t\) から、\(B\) の取り除かれた角柱の部分(横線部)を引き、さらに、残る部分から \(A\) の取り除かれた角柱の部分(縦線部)を引けば良い。

次に、\(1\leq t\leq\sqrt{2}\) のとき。下図において、正方形 \(S_t\) から、\(B\) の取り除かれた角柱の部分(横線部)を引けば良い。

最後に、\(\sqrt{2}\leq t\leq2\) のとき。下図において、正方形 \(S_t\) のみ考えれば良い。

さて、

  • 正方形 \(S_t\) の作る立体の体積 \(V_1\) は
    \begin{align}
    V_1&=\int_0^2 (4-t^2) dt
    \end{align}
  • 横線の長方形の作る立体の体積 \(V_2\) は
    \begin{align}
    V_2&=\int_0^\sqrt{2} (\sqrt{2}-t)\sqrt{4-t^2} dt
    \end{align}
  • 縦線の長方形の作る立体の体積 \(V_3\) は
    \begin{align}
    V_3&=\int_0^1 \left\{\sqrt{4-t^2}-(\sqrt{2}-t)\right\} dt
    \end{align}

ここで、\(t=2\sin\theta\) とおくと\begin{align}
\int \sqrt{4-t^2} dt
&=4\int \cos^2\theta d\theta\\
&=2\int (1+\cos 2\theta) d\theta\\
&=2\theta+\sin 2\theta+C
\end{align}となる。但し、\(C\) は積分定数である。

よって、求める体積を \(V\) とおくと

\begin{align}
\frac{V}{8}
&=V_1-V_2-V_3\\
&=\left(4\times2+\frac{2^3}{3}\right)\\
&\qquad-\left(\sqrt{2}\Bigl[2\theta+\sin 2\theta\Bigr]_0^{\frac{\pi}{4}}+\frac{1}{3}\left[(4-t^2)^{\frac{3}{2}}\right]_0^\sqrt{2}\right)\\
&\qquad-\left\{\Bigl[2\theta+\sin 2\theta\Bigr]_0^{\frac{\pi}{6}}-\left(\sqrt{2}-\frac{1}{2}\right)\right\}\\
&=\left(8+\frac{8}{3}\right)\\
&\qquad-\left(\frac{\sqrt{2}}{2}\pi+\sqrt{2}+\frac{2\sqrt{2}}{3}+\frac{8}{3}\right)\\
&\qquad-\left(\frac{\pi}{3}+\frac{\sqrt{3}}{2}-\sqrt{2}+\frac{1}{2}\right)\\
&=\frac{15}{2}-\frac{2\sqrt{2}}{3}-\frac{\sqrt{3}}{2}-\frac{\pi}{3}-\frac{\sqrt{2}}{2}\pi
\end{align}

すなわち

\begin{align}
V=60-\frac{16\sqrt{2}}{3}-4\sqrt{3}-\frac{8}{3}\pi-4\sqrt{2}\pi
\end{align}

となる。

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私が考えたこと

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基本的な方針の確認。

柱体や錐体、球体などの単純な立体ではないため、\(A\) と \(B\) の共通部分に対して軸を設定し、その軸に垂直な面で切った断面を考える。その断面積を軸に沿って積分することにより、体積を計算する。

立体の対称性について。

\(A\) は \(xy\) 平面、\(yz\) 平面、\(zx\) 平面に関して対称である。また、\(B\) も同様に \(xy\) 平面、\(yz\) 平面、\(zx\) 平面に関して対称である。よって、体積を求める \(A\) と \(B\) の共通部分も \(xy\) 平面、\(yz\) 平面、\(zx\) 平面に関して対称である。よって、断面について考察するときは
\begin{align}
x&\geq0,&y&\geq0,&z&\geq0
\end{align}の範囲のみ考え、積分して体積を計算し、その対称性から \(8\) 倍すれば求めたい体積を得る。

闇雲に計算しないように。

対称性から、積分する際の軸として \(z\) 軸を採用する。\(A\) と \(B\) を輪切りにしたとき、\(z\) 座標に関して
\begin{align}
0\leq z\leq1,\quad1\leq z\leq\sqrt{2},\quad\sqrt{2}\leq z\leq2
\end{align}で断面の形状が変わるので場合分けを行うことになる。この場合分けを行う目的は「断面の様子を知ること」であるので、断面積の積分も上記の \(3\) つの区間に分けて行う必要はない。勿論、数学的には誤りではないが、結果的に積分区間を分割する必要がないものがあれば、一度に定積分の計算をしてしまった方が楽である。

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感想

Hello_re_3evm

やること自体は、\(z\) 軸に垂直な断面の面積を考えて積分するだけです。しかし、平面 \(z=t\) による断面の様子を観察した際の
\begin{align}
0\leq t\leq1,\ 1\leq t\leq\sqrt{2},\ \sqrt{2}\leq t\leq2
\end{align}の場合分けをそのままに

  • \(\displaystyle \int_0^1 \left\{\sqrt{4-t^2}-(\sqrt{2}-t)\right\}\left(\sqrt{4-t^2}-1\right) dt\)
  • \(\displaystyle \int_1^\sqrt{2} \left\{\sqrt{4-t^2}-(\sqrt{2}-t)\right\}\sqrt{4-t^2} dt\)
  • \(\displaystyle \int_\sqrt{2}^2 \left(\sqrt{4-t^2}\right)^2 dt\)

を個別に計算しようとすると大変なことになるのではないかなと思います。様子を把握できた時点で、楽に積分できるよう、横線部や縦線部を考えて工夫することを意識してみました。(もっと良い工夫もあるかもしれません。)

また、\(\sqrt{4-t^2}\) の定積分を行うことになりますが、半径 \(2\) の扇形や直角三角形を考えることで、図形的に面積を計算することもできると思います。今回は、予め \(t=2\sin\theta\) と置換して不定積分を計算し、原始関数をひとつ準備しておく方針で解答を作成しました。

AkiyaMath

 
▶︎数学愛好家
▶︎修士(数理学)
▶︎中高教諭専修免許状(数学)
▶︎実用数学技能検定1級
▶︎統計検定2級
 
自分自身の力を存分に発揮し、着実に前へ進もう。
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