みなさん、こんにちは。
今回は「今週の実積分」より、次の問題を解いてゆきたいと思います。
複素積分に関する「コーシーの積分定理」や「留数定理」の実積分への応用の例題は 以下の記事 にまとめています。
複素関数論の講義の復習、期末試験やレポート、院試対策等に是非お役立て下さい!
【解答例】
関数 \(f(z)\) と経路 \(\Gamma\) の設定
まず、$$f(z)=\frac{e^{iz}}{z}$$ とし、積分経路として次の閉曲線 \(\Gamma\) を考える。
まず、各経路 \(\Gamma_1+\Gamma_3\),\(\Gamma_2\),\(\Gamma_4\) 上での積分値を個別に考えてゆきます!
各 \(\Gamma_k\) 上で積分値を計算
\(\Gamma_1+\Gamma_3\) 上の積分値について
- \(\Gamma_1\) 上で \(z=x\) と置換すると $$dz=dx$$
- \(\Gamma_3\) 上で \(z=-x\) と置換すると $$dz=-dx$$
よって、\(\Gamma_1+\Gamma_3\) 上において
\begin{align}
&\int_{\Gamma_1+\Gamma_3}f(z)dz\\
&\quad=\int_\varepsilon^R f(x)dx+\int_R^\varepsilon f(-x)(-1)dx\\
&\quad=\int_\varepsilon^R\frac{e^{ix}}{x}dx-\int_\varepsilon^R\frac{e^{-ix}}{x}dx\\
&\quad=\int_\varepsilon^R\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{x}dx\\
&\quad=2i\int_\varepsilon^R\frac{\sin x}{x}dx
\end{align}
であるので
\begin{align}
&\int_{\Gamma_1+\Gamma_3}f(z)dz\to2iI&&(\varepsilon\to+0,\ R\to\infty)\tag{1}
\end{align}
となる。
\(\Gamma_2\) 上の積分値について
\(\Gamma_2\) 上において、\(z=Re^{i\theta}\) と置換すると $$dz=iRe^{i\theta}d\theta$$ すなわち $$\frac{1}{z}dz=id\theta$$ であるので
\begin{align}
\int_{\Gamma_2}f(z)dz
&=\int_0^\pi e^{iRe^{i\theta}}id\theta\\
&=i\int_0^\pi e^{iR\cos\theta}e^{-R\sin\theta}d\theta
\end{align}
となる。
よって、
\begin{align}
\left|\int_{\Gamma_2}f(z)dz\right|
&\leq\int_0^\pi \left|e^{iR\cos\theta}e^{-R\sin\theta}\right|d\theta\\
&=\int_0^\pi e^{-R\sin\theta}d\theta\\
&=2\int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-R\sin\theta}d\theta
\end{align}
である。
ここで、\(\displaystyle 0\leq\theta\leq\frac{\pi}{2}\) において $$\frac{2}{\pi}\theta\leq\sin\theta$$ である(ジョルダンの不等式)ので
\begin{align}
\left|\int_{\Gamma_2}f(z)dz\right|
&\leq 2\int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-\frac{2R}{\pi}\theta}d\theta\\
&=\left[-\frac{\pi}{R}e^{-\frac{2R}{\pi}\theta}\right]_0^{\frac{\pi}{2}}\\
&=\pi\frac{1-e^{-R}}{R}\\
&\to0\quad(R\to\infty)
\end{align}すなわち
\begin{align}
\int_{\Gamma_2}f(z)dz\to0\quad(R\to\infty)\tag{2}
\end{align}となる。
\(\Gamma_4\) 上の積分値について
\(\Gamma_4\) 上において、\(z=\varepsilon e^{i\theta}\) と置換すると $$dz=i\varepsilon e^{i\theta}d\theta$$ すなわち $$\frac{1}{z}dz=id\theta$$ であるので
\begin{align}
\int_{\Gamma_4}f(z)dz
&=\int_\pi^0 e^{i\varepsilon e^{i\theta}}id\theta\\
&=-i\int_0^\pi e^{i\varepsilon e^{i\theta}}d\theta
\end{align}となる。ここで、\(0\leq\theta\leq\pi\) において、被積分関数は \(\theta\) に関して連続であって
\begin{align}
\lim_{\varepsilon\to+0}e^{i\varepsilon e^{i\theta}}=1
\end{align}より有界である。よって、積分と極限が交換できるので
\begin{align}
&\int_{\Gamma_4}f(z)dz\\
&\ \to-i\int_0^\pi d\theta\quad(\varepsilon\to+0)\\
&\ =-\pi i\tag{3}
\end{align}となる。
一方、経路 \(\Gamma\) 全体で考えると、あの定理を適用することができます!
\(\Gamma\) 上で「積分定理」を適用
さて、関数 \(f(z)\) は閉曲線 \(\Gamma\) の囲む領域の境界と内部で正則なので、コーシーの積分定理(Cauchy’s integral theorem)より
\begin{align}
\oint_\Gamma f(z)dz=0
\end{align}すなわち
\begin{align}
\int_{\Gamma_1+\Gamma_3}f(z)dz+\int_{\Gamma_2}f(z)dz+\int_{\Gamma_4}f(z)dz=0\tag{4}
\end{align}
が成り立つ。
さあ、準備は整いましたね!
極限をとり積分値 \(I\) を得る
式 (4) において極限 \(\varepsilon\to+0\),\(R\to\infty\) を考えると、式 (1)、(2)、(3) より
\begin{align}
2iI+0+(-\pi i)=0
\end{align}すなわち
\begin{align}
I=\frac{\pi}{2}
\end{align}を得る。
これで求めたい積分値を得ることができました。
お疲れ様でした!!
解説動画の紹介
本記事は、YouTube「今週の実積分」で公開されている以下の動画を基に作成されています。
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