【留数定理の応用】 1/(x^2+a^2) 〜複素積分で求めよう!〜

大学院入試解析学系

みなさん、こんにちは。

今回は「今週の実積分」より、次の問題を解いてゆきたいと思います。

今週の実積分 #03

\(a\) を正の定数とする。次の広義積分の値を求めよ。

$$I=\int_{-\infty}^\infty\frac{1}{x^2+a^2}dx$$

複素積分に関する「コーシーの積分定理」や「留数定理」の実積分への応用の例題は 以下の記事 にまとめてゆく予定です。

複素関数論の講義の復習、期末試験やレポート、院試対策等に是非お役立て下さい!

積分値だけ知りたい!

$$\int_{-\infty}^\infty\frac{1}{x^2+a^2}dx=\frac{\pi}{a}$$

広告

【解答例】

関数 \(f(z)\) と経路 \(\Gamma\) の設定

まず、$$f(z)=\frac{1}{z^2+a^2}$$ とし、積分経路として半径 \(R\) の上半円 \(\Gamma\) を考える。

この関数と積分経路にする気持ちは...

まず、関数 \(f(z)\) は素直に
$$f(z)=\frac{1}{z^2+a^2}$$と設定します。

一方、直交座標での重積分で長方形
$$\{\ (x,y) \mid a\leq x\leq b,\ c\leq y\leq d\ \}$$が扱いやすかったように、極座標(極形式)ではバウムクーヘンを切った形(中心が埋まった扇形も含む)
$$\{\ (r\cos\theta,r\sin\theta) \mid s\leq r\leq t ,\ \alpha\leq \theta\leq \beta\ \}$$が扱いやすい
です。

極限をとることで実軸全体に広がってゆくものにしたいので、例えば、上記のような上半円の積分経路が考えられます。(原点を除く必要はありません。)

まず、各経路 \(\Gamma_1\),\(\Gamma_2\) 上での積分値を個別に考えてゆきます!

各 \(\Gamma_k\) 上で積分値を計算

\(\Gamma_1\) 上の積分値について

\(\Gamma_1\) 上において、\(z=x\) と置換すると $$dz=dx$$ であるので
\begin{align}
&\int_{\Gamma_1}f(z)dz\\
&\qquad=\int_{-R}^Rf(x)dx\\
&\qquad=\int_{-R}^R\frac{1}{x^2+a^2}dx
\end{align}より
\begin{align}
\int_{\Gamma_1}f(z)dz\to I\quad(R\to\infty)\tag{1}
\end{align}となる。

\(\Gamma_2\) 上の積分値について

\(\Gamma_2\) 上において、\(z=Re^{i\theta}\) とおくと $$dz=iRe^{i\theta}d\theta$$ であるので
\begin{align}
&\int_{\Gamma_2}f(z)dz\\
&\qquad=\int_0^\pi f(Re^{i\theta})iRe^{i\theta}d\theta\\
&\qquad=iR\int_0^\pi \frac{e^{i\theta}}{R^2e^{2i\theta}+a^2}d\theta
\end{align}である。

よって、\(R\) を十分大きくとると
\begin{align}
&\left|\int_{\Gamma_2}f(z)dz\right|\\
&\qquad\leq R\int_0^\pi \frac{|e^{i\theta}|}{|R^2e^{2i\theta}+a^2|}d\theta\\
&\qquad\leq R\int_0^\pi \frac{1}{R^2-a^2}d\theta\\
&\qquad=\pi\frac{R}{R^2-a^2}\\
&\qquad\to0\qquad(R\to\infty)
\end{align}すなわち
\begin{align}
\int_{\Gamma_2}f(z)dz\to0\quad(R\to\infty)\tag{2}
\end{align}となる。

一方、経路 \(\Gamma\) 全体で考えると、留数定理を適用することができます!

広告

\(\Gamma\) 上で「留数定理」を適用

さて、十分大きな \(R\) について、関数 \(f(z)\) は閉曲線 \(\Gamma\) の囲む領域の内部に孤立特異点 \(z=ia\) を持ち、それ以外で正則である。これは \(1\) 位の極なので、留数定理Residue theorem)より
\begin{align}
\oint_\Gamma f(z)dz
&=2\pi i\ \underset{z=ia}{\rm Res}f(z)\\
&=2\pi i\lim_{z\to ia}\frac{1}{z+ia}\\
&=2\pi i\frac{1}{2ia}\\
&=\frac{\pi}{a}
\end{align}すなわち
\begin{align}
\int_{\Gamma_1}f(z)dz+\int_{\Gamma_2}f(z)dz=\frac{\pi}{a}\tag{3}
\end{align}が成り立つ。

留数の計算は大丈夫ですか?

関数 \(\displaystyle f(z)=\frac{1}{z^2+a^2}\) が \(1\) 位の極 \(ia\) の周りで
\begin{align}
f(z)
&=\sum_{n=-1}^{\infty} a_n(z-ia)^n\\
&=\frac{a_{-1}}{z-ia}+a_0+a_1(z-ia)+\cdots
\end{align}とローラン展開できたとすると、\(z=ia\) における留数は
$$\underset{z=ia}{\rm Res}f(z)=a_{-1}$$によって求めることがきます。具体的に、ローラン展開から係数 \(a_{-1}\) を抽出するには

  1. 両辺に \((z-ia)\) をかけて$$(z-ia)f(z)=a_{-1}+a_0(z-ia)+\cdots$$とし、負冪の項をなくします。
  2. 両辺の極限をとることで$$\lim_{z\to ia}\left\{(z-ia)f(z)\right\}=a_{-1}$$が成り立ちます。

今、\(\displaystyle f(z)=\frac{1}{(z+ia)(z-ia)}\) であるので
$$\underset{z=ia}{\rm Res}f(z)=\lim_{z\to ia}\frac{1}{z+ia}$$で求められるのです。

さあ、準備は整いましたね!

極限をとり積分値 \(I\) を得る

式 (3) において極限 \(R\to\infty\) を考えると、式 (1)、(2) より
\begin{align}
I+0=\frac{\pi}{a}
\end{align}すなわち
\begin{align}
I=\frac{\pi}{a}
\end{align}を得る。

これで求めたい積分値を得ることができました。

お疲れ様でした!!

広告

解説動画の紹介

Hello_re_3evm

本記事は、YouTube「今週の実積分」で公開されている以下の動画を基に作成されています。

お気づきの点等ございましたらコメントをお願いします。

みなさんの参考になれば幸いです!

AkiyaMath

 
▶︎数学愛好家
▶︎修士(数理学)
▶︎中高教諭専修免許状(数学)
▶︎実用数学技能検定1級
▶︎統計検定2級
 
自分自身の力を存分に発揮し、着実に前へ進もう。
一度きりの自分自身の人生を、ありのままに楽しもう。
各々が抱える「好き」を尊重し合える関係を大切に…。
 
Color your life your own colors.

AkiyaMathをフォロー
みなさんの参考になれば幸いです!
AkiyaMathをフォロー
広告
広告

コメント

広告
大学数学 / 大学院入試 / 【留数定理の応用】 1/(x^2+a^2) 〜複素積分で求めよう!〜
タイトルとURLをコピーしました