みなさん、こんにちは。
今回は「今週の実積分」より、次の問題を解いてゆきたいと思います。
複素積分に関する「コーシーの積分定理」や「留数定理」の実積分への応用の例題は 以下の記事 にまとめてゆく予定です。
複素関数論の講義の復習、期末試験やレポート、院試対策等に是非お役立て下さい!
【解答例】
関数 \(f(z)\) と経路 \(\Gamma\) の設定
まず、$$f(z)=\frac{1}{z^2+a^2}$$ とし、積分経路として半径 \(R\) の上半円 \(\Gamma\) を考える。
まず、各経路 \(\Gamma_1\),\(\Gamma_2\) 上での積分値を個別に考えてゆきます!
各 \(\Gamma_k\) 上で積分値を計算
\(\Gamma_1\) 上の積分値について
\(\Gamma_1\) 上において、\(z=x\) と置換すると $$dz=dx$$ であるので
\begin{align}
&\int_{\Gamma_1}f(z)dz\\
&\qquad=\int_{-R}^Rf(x)dx\\
&\qquad=\int_{-R}^R\frac{1}{x^2+a^2}dx
\end{align}より
\begin{align}
\int_{\Gamma_1}f(z)dz\to I\quad(R\to\infty)\tag{1}
\end{align}となる。
\(\Gamma_2\) 上の積分値について
\(\Gamma_2\) 上において、\(z=Re^{i\theta}\) とおくと $$dz=iRe^{i\theta}d\theta$$ であるので
\begin{align}
&\int_{\Gamma_2}f(z)dz\\
&\qquad=\int_0^\pi f(Re^{i\theta})iRe^{i\theta}d\theta\\
&\qquad=iR\int_0^\pi \frac{e^{i\theta}}{R^2e^{2i\theta}+a^2}d\theta
\end{align}である。
よって、\(R\) を十分大きくとると
\begin{align}
&\left|\int_{\Gamma_2}f(z)dz\right|\\
&\qquad\leq R\int_0^\pi \frac{|e^{i\theta}|}{|R^2e^{2i\theta}+a^2|}d\theta\\
&\qquad\leq R\int_0^\pi \frac{1}{R^2-a^2}d\theta\\
&\qquad=\pi\frac{R}{R^2-a^2}\\
&\qquad\to0\qquad(R\to\infty)
\end{align}すなわち
\begin{align}
\int_{\Gamma_2}f(z)dz\to0\quad(R\to\infty)\tag{2}
\end{align}となる。
一方、経路 \(\Gamma\) 全体で考えると、留数定理を適用することができます!
\(\Gamma\) 上で「留数定理」を適用
さて、十分大きな \(R\) について、関数 \(f(z)\) は閉曲線 \(\Gamma\) の囲む領域の内部に孤立特異点 \(z=ia\) を持ち、それ以外で正則である。これは \(1\) 位の極なので、留数定理(Residue theorem)より
\begin{align}
\oint_\Gamma f(z)dz
&=2\pi i\ \underset{z=ia}{\rm Res}f(z)\\
&=2\pi i\lim_{z\to ia}\frac{1}{z+ia}\\
&=2\pi i\frac{1}{2ia}\\
&=\frac{\pi}{a}
\end{align}すなわち
\begin{align}
\int_{\Gamma_1}f(z)dz+\int_{\Gamma_2}f(z)dz=\frac{\pi}{a}\tag{3}
\end{align}が成り立つ。
さあ、準備は整いましたね!
極限をとり積分値 \(I\) を得る
式 (3) において極限 \(R\to\infty\) を考えると、式 (1)、(2) より
\begin{align}
I+0=\frac{\pi}{a}
\end{align}すなわち
\begin{align}
I=\frac{\pi}{a}
\end{align}を得る。
これで求めたい積分値を得ることができました。
お疲れ様でした!!
解説動画の紹介
本記事は、YouTube「今週の実積分」で公開されている以下の動画を基に作成されています。
お気づきの点等ございましたらコメントをお願いします。
みなさんの参考になれば幸いです!
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