【京都大学-理系】第1問「合同式で多項式(整式)を決定する。」解答・解説[過去問 2023年度]

大学入試数学IIB数学IIIC
京都大学 第1問(2023年度 前期理系)

問1 定積分 \(\displaystyle \int_1^4 \sqrt{x}\log(x^2) dx\) の値を求めよ。

問2 整式 \(x^{2023}-1\) を整式 \(x^4+x^3+x^2+x+1\) で割ったときの余りを求めよ。

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【解答例】

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問1

\(t=\sqrt{x}\) と置換すると \(x=t^2\) であって \(dx=2tdt\) となる。よって、

\begin{align}
\int_1^4 \sqrt{x}\log(x^2) dx
&=\int_1^2 t\log(t^4) 2tdt\\
&=8\int_1^2 t^2\log t dt\\
&=8\left(\left[\frac{t^3}{3}\log t\right]_1^2-\int_1^2 \frac{t^2}{3}dt\right)\\
&=8\left(\frac{8}{3}\log2-\frac{7}{9}\right)\\
&=\frac{64}{3}\log2-\frac{56}{9}
\end{align}

を得る。

問2

まず、商と余りをそれぞれ \(Q(x), R(x)\) とおくと、整式 \(x^{2023}-1\) は

\begin{align}
Q(x)(x^4+x^3+x^2+x+1)+R(x)\tag{1}
\end{align}

と書ける。ここで、

\begin{align}
x^5-1=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)
\end{align}

より、方程式 \(x^4+x^3+x^2+x+1=0\) の解は \(1\) を除く \(1\) の \(5\) 乗根である。

次に、\(1\) 以外の \(1\) の \(5\) 乗根を任意にとり \(\alpha\) とおく。このとき、
\begin{align}
\alpha^5=1,\quad
\alpha^4+\alpha^3+\alpha^2+\alpha+1=0
\end{align}より、式 (1) に \(x=\alpha\) を代入すると
\begin{align}
Q(\alpha)\times0+R(\alpha)=\alpha^{2023}-1
\end{align}すなわち
\begin{align}
R(\alpha)=\alpha^3-1\tag{2}
\end{align}が成り立つ。

さて、多項式として $$R(x)\neq x^3-1$$ であれば \(3\) 次以下の方程式 $$R(x)=x^3-1$$ の解は高々 \(3\) 個である。一方、式 (2) の \(\alpha\) として相異なる \(4\) 個の複素数をとることができるので、これは矛盾である。

よって、求める余り \(R(x)\) は \(x^3-1\) である。

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考察と感想

Hello_re_3evm

問1について。

\(1\leq x\leq 4\) において \(\log(x^2)=2\log x\) なので、そのまま部分積分をしても大した手間ではないと思います。実際、

\begin{align}
\int_1^4 \sqrt{x}\log(x^2) dx
&=2\int_1^4 \sqrt{x}\log x dx\\
&=2\left(\left[\frac{2}{3}x\sqrt{x}\log x\right]_1^4-\int_1^4 \frac{2}{3}\sqrt{x}dx\right)\\
&=2\left(\frac{16}{3}\log4-\frac{4}{9}\times7\right)\\
&=\frac{64}{3}\log2-\frac{56}{9}
\end{align}

と計算できます。

しかし、

  • 積分区間 \([1,4]\) の上端と下端が共に平方数であること。
  • 被積分関数に現れる \(\sqrt{x}\) を簡単な形にしたい。
  • 対数 \(\log\) の真数は何乗になっても大丈夫。

という気持ちもあるので、今回は \(t=\sqrt{x}\) と置換する方法で解きました。

問2について。

商を \(Q(x)\) とし、余りを \(R(x)\) とすると

\begin{align}
x^{2023}-1=Q(x)(x^4+x^3+x^2+x+1)+R(x)
\end{align}

と書けます。これに方程式 $$x^4+x^3+x^2+x+1=0$$ の解を代入してゆくと、重解を持たなければ多項式 \(R(x)\) を決定することができます。(重解を持つときは微分係数を考えることになる。)数学的には $$R(x)=ax^3+bx^2+cx+d$$ とおいて \(a,b,c,d\) に関する連立方程式を解けば良いですが、今回の解は統一的に表せるので、それを利用することにしました。

整式 \(x^{2023}-1\) を整式 $$g(x)=x^4+x^3+x^2+x+1$$ で割ったときの余りを考えるので、整数に対する合同式のように、整式 \(g(x)\) を法とする整式の合同式を考えることができます。整式 \(g(x)\) の倍数の違いを徹底的に除けば良いので

\begin{align}
x^{2023}-1
&=(x-1)(x^{2022}+x^{2021}+\cdots+x+1)\\
&\equiv(x-1)(x^2+x+1)\\
&=x^3-1
\end{align}

となります。この \(x^3-1\) は \(g(x)\) より低次なので、除法の原理 より余りは一意的に定まり、求める余りは \(x^3-1\) とわかります。

まあ、それを言い始めたら、整式 \(x^5-1\) は \(g(x)\) で割り切れるので \(x^5\equiv1\) であって、$$x^{2023}-1\equiv x^3-1$$ が直ちにわかってしまうのですが…。

AkiyaMath

 
▶︎数学愛好家
▶︎修士(数理学)
▶︎中高教諭専修免許状(数学)
▶︎実用数学技能検定1級
▶︎統計検定2級
 
自分自身の力を存分に発揮し、着実に前へ進もう。
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