今回は、分野を問わず現れる多項式の計算のうち、数学Iより 多項式の展開 の計算を扱いたいと思います。
一部に数学IIの内容も含みますが、本記事では区別せずに一連の流れで扱います。
まずは、多項式の展開に関する基礎的な考え方を解説します。次に問題が続きます。前半の問題1から問題7が基本編、後半の問題8から問題10が応用編です。基本編と応用編、それぞれに解答例も用意してあります。ぜひ、お役立てください!
基礎となる考え方
多項式とは、数と文字に対して加法と乗法を有限回だけ施すことで表せる式のことをいいます。そんな多項式の加法と乗法を繋ぐ唯一の性質は「分配法則」です。
多項式の展開の計算では、各々の因数が持つ項の個数だけ選択肢があります。分配法則によって項を選んでゆき、全ての組合せの “積の和” を考えることになります。そして、同類項をまとめることで多項式の表示が一意的に定まります。
共通する文字がないとき
まず、\((a+b)(x+y+z)\) を展開するときを考えます。項の個数に着目すると
- 因数 \((a+b)\) では項が二つなので \(2\) 通り。
- 因数 \((x+y+z)\) では項が三つなので \(3\) 通り。
これらから独立に項が選ばれるので、展開したときの項は高々 \(2\times3=6\) 個となります。具体的には、因数 \((a+b)\) に着目して場合分けした
\begin{align}
(a+b)(x+y+z)=\underbrace{ax+ay+az}_{a を選んだ項}+\underbrace{bx+by+bz}_{b を選んだ項}
\end{align}もしくは、因数 \((x+y+z)\) に着目して場合分けした
\begin{align}
(a+b)(x+y+z)=\underbrace{ax+bx}_{x を選んだ項}+\underbrace{ay+by}_{y を選んだ項}+\underbrace{az+bz}_{z を選んだ項}
\end{align}のように計算できます。
ある文字について整理するとき
次に、\((x+3)(x^2+2x-1)\) を展開するときを考えます。上と同様に計算すると \(6\) 個の項が現れて、同類項を係数の計算によってまとめるという二段階の手順があります。数学的にはもちろん正しいですが
- 多項式が \(3\) 次式であること。
- 同類項をまとめることになること。
がわかっています。ですので、もとの式の因数からどの項を選ぶかで場合分けするのではなく、展開した後に「何次の項の係数になるのか」で場合分けする方法も有効です。具体的には、数式を書きながら
- \(3\) 次の項の係数は$$\fbox{\(1\) 次の係数}\times\fbox{\(2\) 次の係数}=1$$
- \(2\) 次の項の係数は$$\left(\fbox{\(1\) 次の係数}\times\fbox{\(1\) 次の係数}\right)+\left(\fbox{\(0\) 次の係数}\times\fbox{\(2\) 次の係数}\right)=2+3=5$$
- \(1\) 次の項の係数は$$\left(\fbox{\(1\) 次の係数}\times\fbox{\(0\) 次の係数}\right)+\left(\fbox{\(0\) 次の係数}\times\fbox{\(1\) 次の係数}\right)=(-1)+6=5$$
- \(0\) 次である定数項は$$\fbox{\(0\) 次の係数}\times\fbox{\(0\) 次の係数}=-3$$
と考えることで
\begin{align}
(x+3)(x^2+2x-1)=x^3+5x^2+5x-3
\end{align}のように一発で計算できます。
共通する式が作り出せるとき
ただ展開すれば良いのなら、第一の方法だけで十分ではあります。しかし、実際に計算をする手間を考えて第二の場合分けの仕方を考えました。より強く、複数の因数に共通する式が見出だせた場合は、その式を一文字とみなすことで計算の手続きが楽になる場合もあります。
基本編
問題1:基礎の確認(1)
問題2:基礎の確認(2)
問題3:\((x+a)^2\)
問題4:\((x+a)^n\),\((a+b+c)^2\)
問題5:\((x+a)(x+b)\)
問題6:\((x+a)(x-a)\)
問題7:\((x+a)(x^2-ax+a^2)\)
基本編の解答例
ここまでに紹介した問題の解答例です。見たい問題をクリック・タップしてご覧ください。(数式が長く、スマホなどの画面に収まっていない場合、横にスクロールすることで数式の続きが見れます。)
応用編
問題8:置き換えの工夫
問題9:順序や組合せの工夫
問題10:その他
応用編の解答例
ここまでに紹介した問題の解答例です。見たい問題をクリック・タップしてご覧ください。(数式が長く、スマホなどの画面に収まっていない場合、横にスクロールすることで数式の続きが見れます。)
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逆の計算となる多項式の因数分解について、本記事の内容を踏まえてこちらの記事をご覧ください。
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