【東京大学-理系】第5問「多項式の合同式に微分法を応用する。」解答・解説[過去問 2023年度]

大学入試数学IIB
東京大学 第5問(2023年度 前期理系)

整式 \(f(x)=(x-1)^2(x-2)\) を考える。

(1)\(g(x)\) を実数を係数とする整式とし、\(g(x)\) を \(f(x)\) で割った余りを \(r(x)\) とおく。\(g(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りと \(r(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りが等しいことを示せ。

(2)\(a\),\(b\) を実数とし、\(h(x)=x^2+ax+b\) とおく。\(h(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りを \(h_1(x)\) とおき、\(h_1(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りを \(h_2(x)\)  とおく。\(h_2(x)\) が \(h(x)\) に等しくなるような \(a\),\(b\) の組をすべて求めよ。

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【解答例】

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(1)

\(g(x)-r(x)\) は \(f(x)\) で割り切れるので、実数係数の整式 \(q(x)\) が存在して
\begin{align}
g(x)=f(x)q(x)+r(x)
\end{align}と書ける。この両辺を \(7\) 乗すると、二項定理より

\begin{align}
g(x)^7
&=\sum_{k=0}^7{}_7{\rm C}_k (f(x)q(x))^kr(x)^{7-k}\\
&=f(x)\left(\sum_{k=1}^7{}_7{\rm C}_k f(x)^{k-1}q(x)^kr(x)^{7-k}\right)+r(x)^7
\end{align}

となる。これより、\(g(x)^7-r(x)^7\) は \(f(x)\) で割り切れるので、\(g(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りと \(r(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りは等しい。

(2)

まず、\(h(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りが \(h_1(x)\) であるので、(1)より \(\{h(x)^7\}^7=h(x)^{49}\) を \(f(x)\) で割った余りと \(h_1(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余り \(h_2(x)\) は等しい。

ここで、\(h(x)\) の次数は \(f(x)\) の次数より低いので、\(h(x)^{49}-h(x)\) が \(f(x)\) で割り切れれば \(h(x)\) は余り \(h_2(x)\) に一致する。逆に、\(h(x)\) が余り \(h_2(x)\) に一致すれば \(h(x)^{49}-h(x)\) は \(f(x)\) で割り切れる。

よって、整式 \(h(x)^{49}-h(x)\) が \(f(x)\) で割り切れるような実数 \(a\),\(b\) の組を求めれば良い。

さて、\(h(x)^{49}-h(x)\) が \(f(x)\) で割り切れるとき
\begin{align}
h(x)^{49}-h(x)=f(x)p(x)\tag{1}
\end{align}となるような実数係数の整式 \(p(x)\) が存在する。また、この両辺を \(x\) に関して微分すると

\begin{align}
(49h(x)^{48}-1)h^\prime(x)=f^\prime(x)p(x)+f(x)p^\prime(x)\tag{2}
\end{align}

が成り立つ。このとき、\(f(1)=f(2)=0\) である。また、
\begin{align}
f^\prime(x)=2(x-1)(x-2)+(x-1)^2
\end{align}より \(f^\prime(1)=0\) である。

  • 式 (1) で \(x=1\) とすると \(h(1)^{49}-h(1)=f(1)p(1)\) すなわち
    \begin{align}
    h(1)(h(1)^{48}-1)=0\tag{3}
    \end{align}
  • 式 (1) で \(x=2\) とすると、同様に
    \begin{align}
    h(2)(h(2)^{48}-1)=0\tag{4}
    \end{align}
  • 式 (2) で \(x=1\) とすると $$(49h(1)^{48}-1)h^\prime(1)=f^\prime(1)p(1)+f(1)p^\prime(1)$$ すなわち
    \begin{align}
    (49h(1)^{48}-1)h^\prime(1)=0\tag{5}
    \end{align}

さて、方程式 $$t(t^{48}-1)=0$$ の実数解は \(0, 1, -1\) のみである。式 (3),(4) において、\(h(1)\) と \(h(2)\) もこの実数解のいずれかになるので $$h(1), h(2)\in\{0, 1, -1\}$$ である。このとき、式 (5) において \(49h(1)^{48}-1\) が \(0\) になることはないので
\begin{gather}
h^\prime(1)=0\\
2+a=0\\
a=-2
\end{gather}である。このとき、
\begin{align}
h(1)&=1-2+b=b-1,\\
h(2)&=4-4+b=b
\end{align}より $$b-1, b\in\{0, 1, -1\}$$ すなわち \(b=0,1\) である。

逆に、\((a,b)=(-2,0),(-2,1)\) のとき、実数係数の整式 \(H(x)=h(x)^{49}-h(x)\) について
\begin{align}
\begin{cases}
H(1)=0\\
H^\prime(1)=0\\
H(2)=0
\end{cases}
\end{align}なので、\(H(x)\) は \((x-1)^2(x-2)\) で割り切れる。すなわち、\(h(x)^{49}-h(x)\) は \(f(x)\) で割り切れる。

以上より、$$(a,b)=(-2,0),(-2,1)$$ である。

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考察と感想

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(1)について

整数の場合と同じアイデアです。特に合同式に関する証明をしたことがある方は、やりやすかったと思います。ここで、整式 \(f(x)\) の具体的な形は用いておらず、一般論です。

合同式の形で記述してみると、\(g(x)\) を \(f(x)\) で割った余りが \(r(x)\) なので
\begin{align}
g(x)\equiv r(x)\pmod{f(x)}
\end{align}となります。この両辺を \(7\) 乗することで
\begin{align}
g(x)^7\equiv r(x)^7\pmod{f(x)}
\end{align}を得ます。\(r(x)^7\) の次数が \(f(x)\) の次数以上になっている可能性があるので「\(g(x)^7\) を \(f(x)\) で割った余りが \(r(x)^7\) である」とは必ずしも言えません。このことから、今回のような “各々の余りが一致する” という結論を得ます。除法の原理 による、余りに関する次数の条件を忘れてはいけません。

(2)について

整式 \(f(x)\) を法とすると、(1)より $$h(x)^{49}\equiv h_2(x)$$ であることがわかります。ここで、右辺は余り \(h_2(x)\) である必要はないですが、\(h(x)\) の次数も \(f(x)\) の次数より低いことから、\(h_2(x)=h(x)\) であるためには \(h_2(x)\equiv h(x)\) が必要十分になります。

ここで、\(h(x)^{49}\equiv h_2(x)\) より \(h_2(x)\equiv h(x)\) は $$h(x)^{49}\equiv h(x)$$ を意味するので \(H(x)=h(x)^{49}-h(x)\) が \(f(x)=(x-1)^2(x-2)\) で割り切れる条件を考えます。

ここで、
\begin{align}
&H(x)\equiv0\mod{(x-1)^2(x-2)}\\ \\
&\Longleftrightarrow\ \begin{cases}
H(x)\equiv0\mod{(x-1)^2}\\
H(x)\equiv0\mod{(x-2)}
\end{cases}\\ \\
&\Longleftrightarrow\ \begin{cases}
H(x)\equiv0\mod{(x-1)}\\
H^\prime(x)\equiv0\mod{(x-1)}\\
H(x)\equiv0\mod{(x-2)}
\end{cases}\\ \\
&\Longleftrightarrow\ \begin{cases}
H(1)=0\\
H^\prime(1)=0\\
H(2)=0
\end{cases}
\end{align}と条件を書き換えることができます。

これで、普通の実数 \(a\),\(b\) に関する連立方程式の条件となりますが、式の次数が高いので、同じ形である \(H(1)=0\) と \(H(2)=0\) について、\(h(1)\) と \(h(2)\) が実数であることを用いて答えを絞り込みました。

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