数学Bの「統計的な推測」の第1回として 確率変数と確率分布の基本 を扱います。(全7回)
今回は解説を含め、全5問を解いてゆきます。
確率変数の期待値
解答例(その1)
縦軸と横軸にそれぞれ \(1\) 回目と \(2\) 回目に出た目をとり、その積を \(4\) で割った余りを書き込むと以下のようになる。
このとき、\(X\) のとり得る値 \(0\),\(1\),\(2\),\(3\) について(以下、その2と共通。)
- \(X=0\) となるの数は \(1\) 通り
- \(X=1\) となるの数は \(13\) 通り
- \(X=2\) となるの数は \(10\) 通り
- \(X=3\) となるの数は \(12\) 通り
よって、\(X\) の確率分布は以下の通り。
これより、\(X\) の期待値は
\begin{align}
E(X)
&=\frac{1}{36}\left(0\cdot1+1\cdot13+2\cdot10+3\cdot12\right)\\
&=\frac{69}{36}\\
&=\frac{23}{12}\quad(=1.91\dot{6})
\end{align}
解答例(その2)
合同式を知っていれば、目の数字は \(4\) を法として良いことがわかります。\(4\) で割るとき、余りについて \(1\) の目と \(5\) の目は同一視できます。このことから、以下のような解法も考えられます。
縦軸と横軸にそれぞれ \(1\) 回目と \(2\) 回目に出た目を \(4\) を法としてとり、その積を \(4\) で割った余りを書き込むと以下のようになる。
このとき、\(X\) のとり得る値 \(0\),\(1\),\(2\),\(3\) について…(以下、その1と同様。)
分散と標準偏差
解答例(その1)
\(X\) のとり得る値は \(2\),\(3\),\(4\),\(5\),\(6\) である。
- \(X=2\) となるのは「白白」のときで
\begin{align}
P(X=2)
&=\frac{2}{6}\cdot\frac{1}{5}
=\frac{1}{15}
\end{align} - \(X=3\) となるのは「黒白白」または「白黒白」のときで
\begin{align}
P(X=3)
&=\frac{4}{6}\cdot\frac{2}{5}\cdot\frac{1}{4}+\frac{2}{6}\cdot\frac{4}{5}\cdot\frac{1}{4}\\
&=\frac{2}{15}
\end{align} - \(X=4\) となるのは「黒黒白白」,「黒白黒白」,「白黒黒白」のときで
\begin{align}
P(X=4)
&=\frac{4}{6}\cdot\frac{3}{5}\cdot\frac{2}{4}\cdot\frac{1}{3}\\
&\qquad+\frac{4}{6}\cdot\frac{2}{5}\cdot\frac{3}{4}\cdot\frac{1}{3}\\
&\qquad+\frac{2}{6}\cdot\frac{4}{5}\cdot\frac{3}{4}\cdot\frac{1}{3}\\
&=\frac{3}{15}
\end{align} - \(X=5\) となるのは「黒黒黒白白」,「黒黒白黒白」,「黒白黒黒白」,「白黒黒黒白」のときで
\begin{align}
P(X=5)
&=\frac{4}{6}\cdot\frac{3}{5}\cdot\frac{2}{4}\cdot\frac{2}{3}\cdot\frac{1}{2}\\
&\qquad+\frac{4}{6}\cdot\frac{3}{5}\cdot\frac{2}{4}\cdot\frac{2}{3}\cdot\frac{1}{2}\\ &\qquad+\frac{4}{6}\cdot\frac{2}{5}\cdot\frac{3}{4}\cdot\frac{2}{3}\cdot\frac{1}{2}\\ &\qquad+\frac{2}{6}\cdot\frac{4}{5}\cdot\frac{3}{4}\cdot\frac{2}{3}\cdot\frac{1}{2}\\ &=\frac{4}{15}
\end{align} - \(X=6\) となるのは上記の場合以外なので
\begin{align}
P(X=6)
&=1-\left(\frac{1}{15}+\frac{2}{15}+\frac{3}{15}+\frac{4}{15}\right)\\
&=1-\frac{10}{15}\\
&=\frac{5}{15}
\end{align}
よって、期待値は
\begin{align}
E(X)
&=\frac{1}{15}\left(2\cdot1+3\cdot2+4\cdot3+5\cdot4+6\cdot5\right)\\
&=\frac{70}{15}\\
&=\frac{14}{3}\quad(=4.\dot{6})
\end{align}
また、
\begin{align}
E(X^2)
&=\frac{1}{15}\left(2^2\cdot1+3^2\cdot2+4^2\cdot3+5^2\cdot4+6^2\cdot5\right)\\
&=\frac{350}{15}\\
&=\frac{70}{3}
\end{align}
より、分散は(以下、その2と共通。)
\begin{align}
V(X)
&=E(X^2)-E(X)^2\\
&=\frac{70}{3}-\left(\frac{14}{3}\right)^2\\
&=\frac{14}{9}
\end{align}
さらに、標準偏差は
\begin{align}
\sigma(X)
=\sqrt{\frac{14}{9}}
=\frac{\sqrt{14}}{3}\quad(≒1.247)
\end{align}
解答例(その2)
\(6\) 個すべての球を取り出す場合を考えても良いです。一般の確率 \(P(X=k)\) を求めることで、期待値や分散を求めるときに数列の和 \(\sum\) の公式を使うことができます。
\(X\) のとり得る値は \(2\),\(3\),\(4\),\(5\),\(6\) である。球を取り出した順に左から一列に並べ、\(6\) 個すべて並べたとし、\(X=k\)(\(k=2,3,4,5,6\))のときを考える。
- \(k\) 番目は白球が \({}_2{\rm C}_1=2\) 通りで並ぶ。
- 残った白球は \(1,2,\ldots,k-1\) 番目のうちの \(1\) 箇所に並ぶので \(k-1\) 通り。
- 黒球は残る \(4\) 箇所に並ぶので \(4!\) 通り。
これより、
\begin{align}
P(X=k)
=\frac{2\times(k-1)\times4!}{6!}=\frac{k-1}{15}
\end{align}
よって、期待値は
\begin{align}
E(X)
&=\sum_{k=2}^6 \left(k\times\frac{k-1}{15}\right)\\
&=\frac{1}{15}\sum_{k=1}^6 \left(k^2-k\right)\\
&=\frac{1}{15}\left(\frac{6\cdot7\cdot13}{6}-\frac{6\cdot7}{2}\right)\\
&=\frac{70}{15}\\
&=\frac{14}{3}\quad(=4.\dot{6})
\end{align}
また、
\begin{align}
E(X^2)
&=\sum_{k=2}^6 \left(k^2\times\frac{k-1}{15}\right)\\
&=\frac{1}{15}\sum_{k=1}^6 \left(k^3-k^2\right)\\
&=\frac{1}{15}\left(\frac{6^2\cdot7^2}{4}-\frac{6\cdot7\cdot13}{6}\right)\\
&=\frac{70}{3}
\end{align}
より、分散は…(以下、その1と同様。)
数列の和の応用
解答例
\(X\) のとり得る値は \(0,1,\ldots,n\) である。\(k=0,1,\ldots,n\) に対して \(X=k\) とすると、黒石の間にない白石は \(n-k\) 個である。黒石とその間にある白石は、間にない \(n-k\) 個の白石の間か両端の \(n-k+1\) 箇所のいずれか \(1\) 箇所にある。各々の黒色と色の配置に対して、石は \(n!\times2!\) 通りの並べ方があるので
\begin{align}
P(X=k)
&=\frac{(n-k+1)\times(n!\times2!)}{(n+2)!}\\
&=\frac{2(n-k+1)}{(n+1)(n+2)}
\end{align}
よって、期待値は
\begin{align}
E(X)
&=\sum_{k=0}^n \left\{k\times\frac{2(n-k+1)}{(n+1)(n+2)}\right\}\\
&=\frac{2}{(n+1)(n+2)}\sum_{k=1}^n \{(n+1)k-k^2\}\\
&=\frac{2}{(n+1)(n+2)}\left\{\frac{1}{2}n(n+1)^2-\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\right\}\\
&=\frac{n}{3(n+2)}\left\{3(n+1)-(2n+1)\right\}\\
&=\frac{n}{3}
\end{align}
また、
\begin{align}
E(X^2)
&=\sum_{k=0}^n \left\{k^2\times\frac{2(n-k+1)}{(n+1)(n+2)}\right\}\\
&=\frac{2}{(n+1)(n+2)}\sum_{k=1}^n \{(n+1)k^2-k^3\}\\
&=\frac{2}{(n+1)(n+2)}\left\{\frac{1}{6}n(n+1)^2(2n+1)-\frac{1}{4}n^2(n+1)^2\right\}\\
&=\frac{n(n+1)}{6(n+2)}\left\{2(2n+1)-3n\right\}\\
&=\frac{n(n+1)}{6}
\end{align}
であるので、分散は
\begin{align}
V(X)
&=E(X^2)-E(X)^2\\
&=\frac{n(n+1)}{6}-\left(\frac{n}{3}\right)^2\\
&=\frac{n(n+1)}{6}-\frac{n^2}{9}\\
&=\frac{n\{3(n+1)-2n\}}{18}\\
&=\frac{n(n+3)}{18}
\end{align}
確率変数の変換
解答例
\(P(X=1)=p\)(\(0\leq p\leq1\))とおくと、\(P(X=a)=1-p\) である。
このとき、
\begin{align}
E(X)
&=1\cdot p+a\cdot(1-p)\\
&=(1-a)p+a
\end{align}
であるので、\(5=E(Y)=3E(X)-1\) すなわち \(E(X)=2\) より
\begin{align}
(1-a)p+a=2\tag{1}
\end{align}
である。
一方、
\begin{align}
V(X)
&=1^2\cdot p+a^2\cdot(1-p)-E(X)^2\\
&=(1-a^2)p+a^2-4
\end{align}
であるので、\(9=V(Y)=9V(X)\) すなわち \(V(X)=1\) より
\begin{align}
(1-a^2)p+a^2=5\tag{2}
\end{align}
である。
よって、式 (1) より \((1-a)p=2-a\) なので、式 (2) より
\begin{align}
(1+a)(1-a)p+a^2&=5\\
(1+a)(2-a)+a^2&=5\\
2+a&=5\\
a&=3
\end{align}
を得る。このとき、式 (1) より \(p=\dfrac{1}{2}\) なので \(0\leq p\leq1\) を満たす。
以上より、\(a=3\) である。
\(2\) 変数の同時分布
解答例
\(X\) と \(Y\) のとり得る値は共に \(1,2,3\) であって
\begin{align}
P(X=1, Y=1)&=\frac{2}{10}\cdot\frac{1}{9}=\frac{2}{90}\\
P(X=1, Y=2)&=\frac{2}{10}\cdot\frac{3}{9}=\frac{6}{90}\\
P(X=1, Y=3)&=\frac{2}{10}\cdot\frac{5}{9}=\frac{10}{90}\\ \\
P(X=2, Y=1)&=\frac{3}{10}\cdot\frac{2}{9}=\frac{6}{90}\\
P(X=2, Y=2)&=\frac{3}{10}\cdot\frac{2}{9}=\frac{6}{90}\\
P(X=2, Y=3)&=\frac{3}{10}\cdot\frac{5}{9}=\frac{15}{90}\\ \\
P(X=3, Y=1)&=\frac{5}{10}\cdot\frac{2}{9}=\frac{10}{90}\\
P(X=3, Y=2)&=\frac{5}{10}\cdot\frac{3}{9}=\frac{15}{90}\\
P(X=3, Y=3)&=\frac{5}{10}\cdot\frac{4}{9}=\frac{20}{90}
\end{align}
よって、\(X\) と \(Y\) の同時分布は以下の通り。
最後に。
分散 \(V(X)\) を求める際、今回は $$V(X)=E(X^2)-E(X)^2$$ という公式を用いました。定義通りにいけば $$V(X)=E((X-m)^2)$$ ですので、もちろんそれでも構いません。ただ、偏差 \(X-m\) が整数でないと計算が複雑になってしまうので、前者の公式を採用しました。偏差が整数の場合は後者の定義の方が楽な場合もあります。
お疲れ様でした。
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