数学Bの「統計的な推測」の第2回として 確率変数の和と積の計算 を扱います。(全7回)
今回は解説を含め、全4問を解いてゆきます。
独立性・従属性の判定
解答例
まず、\(a\) が \(3\) の倍数となるのは \(a=3,6\) のみなので $$P(A)=\frac{2}{6}=\frac{1}{3}$$ また、\(B\) の余事象 \(\overline{B}\) は \(ab\geq25\) であって、それは $$(a,b)=(5,5),(5,6),(6,5),(6,6)$$ のみなので $$P(\overline{B})=\frac{4}{36}=\frac{1}{9}$$
次に、\(a\) が \(3\) の倍数で \(ab\geq25\) となるのは \((a,b)=(6,5),(6,6)\) のみなので $$P(A\cap\overline{B})=\frac{2}{36}=\frac{1}{18}$$
よって、$$P(A\cap\overline{B})\neq P(A)P(\overline{B})$$ であるので、\(A\) と \(\overline{B}\) は従属である。すなわち、\(A\) と \(B\) は従属である。
今回の解答では「\(A\) と \(\overline{B}\) は従属であること」と「\(A\) と \(B\) は従属であること」が同値であることを用いました。もちろん、「\(A\) と \(\overline{B}\) は独立であること」と「\(A\) と \(B\) は独立であること」は同値です。(難しくないので、余裕があれば定義通りに証明してみましょう。)
素直に事象 \(B\) について調べても構いません。ただ、余事象の確率から攻めると楽だなと判断するのと同じように、この性質を知っていると独立性の判定でも選択肢として十分あり得るというわけです。
和と積の期待値
解答例
(1)
袋 \({\rm A}\) について、
- \(\displaystyle P(X=0)=\frac{{}_3{\rm C}_2}{{}_5{\rm C}_2}=\frac{3}{10}\)
- \(\displaystyle P(X=1)=\frac{{}_2{\rm C}_1\times{}_3{\rm C}_1}{{}_5{\rm C}_2}=\frac{6}{10}\)
- \(\displaystyle P(X=2)=\frac{{}_2{\rm C}_2}{{}_5{\rm C}_2}=\frac{1}{10}\)
であるので、期待値は
\begin{align}
E(X)
&=\frac{1}{10}\left(0\cdot3+1\cdot6+2\cdot1\right)\\
&=\frac{8}{10}\\
&=\frac{4}{5}\quad(=0.8)
\end{align}
袋 \({\rm B}\) について、
- \(\displaystyle P(Y=0)=\frac{{}_2{\rm C}_2}{{}_5{\rm C}_2}=\frac{1}{10}\)
- \(\displaystyle P(Y=1)=\frac{{}_3{\rm C}_1\times{}_2{\rm C}_1}{{}_5{\rm C}_2}=\frac{6}{10}\)
- \(\displaystyle P(Y=2)=\frac{{}_3{\rm C}_2}{{}_5{\rm C}_2}=\frac{3}{10}\)
であるので、期待値は
\begin{align}
E(Y)
&=\frac{1}{10}\left(0\cdot1+1\cdot6+2\cdot3\right)\\
&=\frac{12}{10}\\
&=\frac{6}{5}\quad(=1.2)
\end{align}
(2)
まず、
\begin{align}
E(3X-2Y)
&=3E(X)-2E(Y)\\
&=3\cdot\frac{4}{5}-2\cdot\frac{6}{5}\\
&=0
\end{align}
次に、\(X\) と \(Y\) は互いに独立であるから
\begin{align}
E(XY)
&=E(X)E(Y)\\
&=\frac{4}{5}\cdot\frac{6}{5}\\
&=\frac{24}{25}
\end{align}
袋 \({\rm B}\) のあたりとはずれのラベルを入れ替えると袋 \({\rm A}\) と同じ状況になります。つまり、確率変数 \(Y\) が従う分布は袋 \({\rm A}\) におけるはずれの本数の分布に一致します。実際、\(E(X)=0.8\) と \(E(Y)=1.2\) を足すと \(2\) になっており、同時に引くくじの本数である \(2\) に等しくなっています。
独立な確率変数の和
解答例
\(k\) 回目に当たりが出たら \(1\)、出なかったら \(0\) をとる確率変数を \(X_k\) とおく。このとき、$$X=X_1+X_2+\cdots+X_{10}$$ である。
例えば、\(X_1\) について
- \(\displaystyle P(X_1=0)=\frac{12}{16}=\frac{3}{4}\)
- \(\displaystyle P(X_1=1)=\frac{4}{16}=\frac{1}{4}\)
よって、$$E(X_1)=0\cdot\frac{3}{4}+1\cdot\frac{1}{4}=\frac{1}{4}$$ また、\({X_1}^2=X_1\) であることに注意すれば
\begin{align}
V(X_1)
&=E({X_1}^2)-E(X_1)^2\\
&=E(X_1)-E(X_1)^2\\
&=\frac{1}{4}-\left(\frac{1}{4}\right)^2\\
&=\frac{3}{16}
\end{align}
これは \(X_k\)(\(k=2,3,\cdots,10\))についても同様で
\begin{gather}
E(X_1)=E(X_2)=\cdots=E(X_{10})=\frac{1}{4},\\
V(X_1)=V(X_2)=\cdots=V(X_{10})=\frac{3}{16}
\end{gather}
を得る。
さて、$$X=X_1+X_2+\cdots+X_{10}$$ であるので
\begin{align}
E(X)
&=E(X_1+X_2+\cdots+X_{10})\\
&=E(X_1)+E(X_2)+\cdots+E(X_{10})\\
&=10\times\frac{1}{4}\\
&=\frac{5}{2}\quad(=2.5)
\end{align}
また、\(X_1,X_2,\cdots,X_{10}\) は互いに独立なので
\begin{align}
V(X)
&=V(X_1+X_2+\cdots+X_{10})\\
&=V(X_1)+V(X_2)+\cdots+V(X_{10})\\
&=10\times\frac{3}{16}\\
&=\frac{15}{8}
\end{align}
\(1\) 回の操作で当たる確率を \(p\) とします。今回の問では \(\displaystyle p=\frac{4}{16}=\frac{1}{4}\) です。また、操作を行う回数も \(10\) 回から \(n\) 回にしてみましょう。
解答例と同様に
\begin{gather}
E(X_1)=E(X_2)=\cdots=E(X_n)=p,\\
V(X_1)=V(X_2)=\cdots=V(X_n)=p(1-p)
\end{gather}
を得ます。独立性より \(X\) の期待値や分散はこれらの和になるので
\begin{align}
E(X)&=np,&
V(X)&=np(1-p)
\end{align}
を得るのです。
これは次回(第3回)で扱う「二項分布」の性質に繋がっています。
確率変数の変換
解答例
- \(\displaystyle P(X=k)=\frac{3}{6}\)(\(k=0,1\))なので
\begin{align}
E(X^2)
&=(0^2+1^2)\cdot\frac{3}{6}\\
&=\frac{3}{6}
\end{align} - \(\displaystyle P(Y=k)=\frac{2}{6}\)(\(k=0,1,2\))なので
\begin{align}
E(Y^2)
&=(0^2+1^2+2^2)\cdot\frac{2}{6}\\
&=\frac{10}{6}
\end{align} - \(k=0,2,3,4\) のとき \(\displaystyle P(Z=k)=\frac{1}{6}\)、\(k=1\) のとき \(\displaystyle P(Z=k)=\frac{2}{6}\) なので
\begin{align}
E(Z^2)
&=(0^2+2^2+3^2+4^2)\cdot\frac{1}{6}+1^2\cdot\frac{2}{6}\\
&=\frac{31}{6}
\end{align}
さて、\({\rm OP}^2=X^2+Y^2+Z^2\) であるので
\begin{align}
E({\rm OP}^2)
&=E(X^2)+E(Y^2)+E(Z^2)\\
&=\frac{3}{6}+\frac{10}{6}+\frac{31}{6}\\
&=\frac{44}{6}\\
&=\frac{22}{3}
\end{align}
最後に。
特別な分布は次回以降で扱ってゆきますが、一般的な分布について知ろうというときに期待値と分散の計算は欠かせません。和の期待値は 線形性 によって分解できますが、積は確率変数の独立性が必要です。それを用いる和の分散も分解できます。これらの計算を自由に行えるようにしておくと、次回扱う二項分布などの理解もスムーズに進むと思います。
お疲れ様でした。
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