数学Bの「統計的な推測」の第3回として 二項分布と正規分布 を扱います。(全7回)
今回は解説を含め、全5問を解いてゆきます。
二項分布の平均と分散
解答例
\(1\) 回の操作で当たりを引く確率は \(\displaystyle p=\frac{a}{100}\) であるので、確率変数 \(X\) は二項分布 \(B(n,p)\) に従う。このとき、平均は \(np\)、分散は \(np(1-p)\) である。
条件より
\begin{align}
\begin{cases}
\displaystyle np=\frac{9}{5}\\
\displaystyle np(1-p)=\frac{36}{25}
\end{cases}
\end{align}
ここで \(np\) を消去すると \(\displaystyle p=\frac{1}{5}\) となり \(0<p<1\) を満たす。よって、
\begin{align}
a&=100p=20,&
n&=\frac{9}{5}\times\frac{1}{p}=9
\end{align}
二項分布の平均の利用
解答例
\(1\) 回の操作で赤球を取り出す確率は \(\displaystyle \frac{3}{20}\) である。赤球が出た回数 \(X\) は二項分布 \(B(10,\frac{3}{20})\) に従う。このとき、平均は $$E(X)=10\times\frac{3}{20}=\frac{3}{2}$$ である。
今、受け取るのは \(50X\) 円なので、その金額の期待値は $$E(50X)=50\times\frac{3}{2}=75$$ である。よって、\(10a>75\) なる最小の自然数 \(a\) は \(8\) である。
確率密度関数と期待値・分散
解答例
確率の総和は \(1\) なので
\begin{align}
1
&=\int_0^3f(x)dx\\
&=a\int_0^3x(3-x)dx\\
&=a\int_0^3(3x-x^2)dx\\
&=a\left[\frac{3}{2}x^2-\frac{x^3}{3}\right]_0^3\\
&=a\left(\frac{27}{2}-9\right)\\
&=\frac{9}{2}a
\end{align}
よって、\(\displaystyle a=\frac{2}{9}\) である。
まず、
\begin{align}
E(X)
&=\int_0^3xf(x)dx\\
&=\frac{2}{9}\int_0^3x^2(3-x)dx\\
&=\frac{2}{9}\int_0^3(3x^2-x^3)dx\\
&=\frac{2}{9}\left[x^3-\frac{x^4}{4}\right]_0^3\\
&=\frac{2}{9}\left(3^3-\frac{3^4}{4}\right)\\
&=\frac{3}{2}
\end{align}
また、
\begin{align}
E(X^2)
&=\int_0^3x^2f(x)dx\\
&=\frac{2}{9}\int_0^3x^3(3-x)dx\\
&=\frac{2}{9}\int_0^3(3x^3-x^4)dx\\
&=\frac{2}{9}\left[\frac{3}{4}x^4-\frac{x^5}{5}\right]_0^3\\
&=\frac{2}{9}\left(\frac{3^5}{4}-\frac{3^5}{5}\right)\\
&=\frac{27}{10}
\end{align}
よって、期待値と分散は
\begin{align}
E(X)&=\frac{3}{2},\\
V(X)&=\frac{27}{10}-\left(\frac{3}{2}\right)^2=\frac{9}{20}
\end{align}
数学IIIの内容で理解できる ベータ関数 由来の公式を使うと以下のように解けます。
\(n=0,1,2,\cdots\) について
\begin{align}
\int_0^3x^{n+1}(3-x)dx
&=\frac{(n+1)!1!}{(n+3)!}3^{n+3}\\
&=\frac{3^{n+3}}{(n+2)(n+3)}
\end{align}
- \(n=0\) のとき \(\displaystyle \frac{3^3}{2\times3}=\frac{9}{2}\) より $$a=\frac{2}{9}$$
- \(n=1\) のとき \(\displaystyle \frac{3^4}{3\times4}=\frac{3^3}{4}\) より $$E(X)=\frac{2}{9}\times\frac{3^3}{4}=\frac{3}{2}$$
- \(n=2\) のとき \(\displaystyle \frac{3^5}{4\times5}=\frac{3^5}{20}\) より $$E(X^2)=\frac{2}{9}\times\frac{3^5}{20}=\frac{27}{10}$$ であるので $$V(X)=\frac{27}{10}-\left(\frac{3}{2}\right)^2=\frac{9}{20}$$
正規分布の利用
解答例
(1)まず、$$Z=\frac{X-171.3}{5.0}$$ は標準正規分布 \(N(0,1)\) に従う。これより、
\begin{align}
P(X\geq178)
&=P(Z\geq1.34)\\
&=0.5-P(0\leq Z<1.34)\\
&=0.5-0.4099\\
&=0.0901
\end{align}
よって、約 \(9.0\) %である。
(2)(1)の \(Z\) について
\begin{align}
P(160 \leq X \leq 170)
&=P(-2.26\leq Z\leq -0.26)\\
&=P(0\leq Z\leq 2.26)-P(0\leq Z\leq 0.26)\\
&=0.4881-0.1026\\
&=0.3855
\end{align}
よって、約 \(38.6\) %である。
(3)\(P(0\leq Z\leq u)=0.45\) とすると \(u≒1.64\) であるので
\begin{align}
X
&\geq 171.3+1.64\times5.0\\
&=171.3+8.20\\
&=179.50
\end{align}
よって、約 \(179.5\,{\rm cm}\) 以上である。
正規分布による近似
解答例
\(1\) 人の解答者が正しい選択肢を選ぶ確率は \(\displaystyle \frac{1}{4}\) である。正しい選択肢を選んだ人数 \(X\) は二項分布 $$B\left(1200,\frac{1}{4}\right)$$ に従う。このとき、期待値と分散は
\begin{align}
E(X)&=1200\times\frac{1}{4}=300\\
V(X)&=1200\times\frac{1}{4}\times\frac{3}{4}=225=15^2
\end{align}
よって、確率変数 \(\displaystyle Z=\frac{X-300}{15}\) は近似的に正規分布 $$N\left(0,1\right)$$ に従う。
これより、求める確率は
\begin{align}
P(270\leq X\leq 315)
&=P(-2\leq Z\leq 1)\\
&=P(0\leq Z\leq 2)+P(0\leq Z\leq 1)\\
&=0.4772+0.3413\\
&=0.8185\\
&≒0.82
\end{align}
最後に。
正規分布以外の連続型確率分布として、問3.3 のような確率密度関数を用いたものが与えられることがあります。memo で紹介したところまではいかなくとも、特に理系の方は \(a\) を求めるときに “1/6公式” が使えるということも押さえておきましょう。
お疲れ様でした。
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