【数学B|標本平均の分布と正規分布】中心極限定理と標準化|統計的な推測5/7

数学IIB

数学Bの「統計的な推測」の第5回として 標本平均の分布と正規分布 を扱います。(全7回)

今回は解説を含め、全3問を解いてゆきます。

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標本比率と正規分布

問 5.1

ある市において、市議会議員選挙の投票率は例年 \(50\)%であることがわかっている。ある選挙後、市民から無作為に \(100\) 人抽出するとき、投票に行った割合を \(R\) とする。

(1)標本比率 \(R\) の期待値 \(E(R)\) と標準偏差 \(\sigma(R)\) を求めよ。

(2)標本比率 \(R\) が \(41\) %以上 \(50\) %以下である確率を求めよ。

解答例(その1)

(1)母比率は \(0.5\)、標本の大きさは \(100\) である。よって、標本比率 \(R\) の期待値は $$E(R)=0.5$$ である。また、標準偏差は $$\sigma(R)=\sqrt{\frac{0.5(1-0.5)}{100}}=\frac{0.5}{10}=0.05$$

(2)(1)より $$Z=\frac{R-0.5}{0.05}$$ は近似的に標準正規分布 \(N(0,1)\) に従う。よって、求める確率は

\begin{align}
P(0.41 \leq R \leq 0.50)
&=P(-1.8 \leq Z \leq 0)\\
&=0.4641
\end{align}

解答例(その2)

標本比率の式を忘れてしまっても、二項分布から導くこともできます。

(1)\(100\) 人中 \(X\) 人が投票に行ったとする。このとき、\(X\) は二項分布 \(B(100,0.5)\) に従う。よって、

\begin{align}
E(X)&=100\cdot0.5=50\\
\sigma(X)&=\sqrt{100\cdot0.5\cdot(1-0.5)}=5
\end{align}

ここで、\(\displaystyle R=\frac{X}{100}\) なので

\begin{align}
E(R)&=\frac{50}{100}=0.5\\
\sigma(R)&=\frac{5}{100}=0.05
\end{align}

(2)(その1と同様。)

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標本平均と正規分布

問 5.2

体重が \(8.0\,{\rm kg}\)、標準偏差 \(0.4\,{\rm kg}\) の正規分布に従う生物集団があるとする。

(1)体重が \(7.2\,{\rm kg}\) から \(8.4\,{\rm kg}\) までのものは全体の何%であるか。

(2)\(4\) つの個体を無作為に取り出したとき、体重の標本平均が \(5.2\,{\rm kg}\) 以上となる確率を求めよ。

解答例

(1)母集団は正規分布 \(N(8.0,0.4^2)\) に従う。 生物集団の体重を \(X\,{\rm kg}\) とすると $$Z=\frac{X-8.0}{0.4}$$ は標準正規分布 \(N(0,1)\) に従う。よって、

\begin{align}
P(7.2 \leq X \leq 8.4)
&=P(-2 \leq Z \leq 1)\\
&=0.4772+0.3413\\
&=0.8185
\end{align}

であるので、\(81.85\)%である。

(2)標本平均を \(\overline{X}\) は、正規分布 \(\displaystyle N\left(8.0,\frac{0.4^2}{4}\right)\) に従う。よって、$$Z=\frac{\overline{X}-8.0}{0.2}$$ は標準正規分布 \(N(0,1)\) に従うので、求める確率は

\begin{align}
P(\overline{X} \geq 5.2)
&=P(Z \geq 1.4)\\
&=0.5-0.4192\\
&=0.0808
\end{align}

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大数の法則について

問 5.3

当たりが \(1\) 本、はずれが \(7\) 本のくじを考える。このくじを \(1\) 本引いて元に戻す操作を \(n\) 回繰り返したとき、当たりが出る相対度数を \(R\) とする。このとき、確率 $$P\left(\left|R-\frac{1}{8}\right|\leq\frac{1}{40}\right)$$ の値を、\(n=175,700,1575\) それぞれに対して求めよ。

解答例

標本の大きさ \(n\) は十分大きいので、相対度数 \(R\) は近似的に正規分布 $$N\left(\frac{1}{8},\frac{1}{8}\left(1-\frac{1}{8}\right)\cdot\frac{1}{n}\right)$$ すなわち $$N\left(\frac{1}{8},\frac{7}{64n}\right)$$ に従う。よって、$$Z=\frac{R-\frac{1}{6}}{\frac{1}{8}\sqrt{\frac{7}{n}}}$$ は近似的に標準正規分布 \(N\left(0,1\right)\) に従う。

このとき、

\begin{align}
P\left(\left|R-\frac{1}{8}\right|\leq\frac{1}{40}\right)
&=P\left(\left|Z\right|\leq\frac{\frac{1}{40}}{\frac{1}{8}\sqrt{\frac{7}{n}}}\right)\\
&=P\left(\left|Z\right|\leq\frac{1}{5}\sqrt{\frac{n}{7}}\right)
\end{align}

これより、

  • \(n=175\) のとき \(\displaystyle \frac{1}{5}\sqrt{\frac{n}{7}}=1\) なので $$P\left(\left|R-\frac{1}{8}\right|\leq\frac{1}{40}\right)=P\left(\left|Z\right|\leq1\right)=0.6826$$
  • \(n=700\) のとき \(\displaystyle \frac{1}{5}\sqrt{\frac{n}{7}}=2\) なので $$P\left(\left|R-\frac{1}{8}\right|\leq\frac{1}{40}\right)=P\left(\left|Z\right|\leq2\right)=0.9544$$
  • \(n=1575\) のとき \(\displaystyle \frac{1}{5}\sqrt{\frac{n}{7}}=3\) なので $$P\left(\left|R-\frac{1}{8}\right|\leq\frac{1}{40}\right)=P\left(\left|Z\right|\leq3\right)=0.9973$$
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最後に。

例えば二項分布のような、ある同一の分布(平均 \(m\)、標準偏差 \(\sigma\))に独立に従う確率変数 $$X_1,X_2,\cdots,X_n$$ について、その標本平均 \(\overline{X}\) を考えます。このとき、$$Z=\frac{\overline{X}-m}{\frac{\sigma}{\sqrt{n}}}$$ は近似的に標準正規分布 \(N(0,1)\) に従います。 (中心極限定理

問題5.2 のように元々の分布が正規分布の場合は、標本の大きさ \(n\) が十分に大きくなくとも \(Z\) は標準正規分布 \(N(0,1)\) に従います。

お疲れ様でした。

AkiyaMath

 
▶︎数学愛好家
▶︎修士(数理学)
▶︎中高教諭専修免許状(数学)
▶︎実用数学技能検定1級
▶︎統計検定2級
 
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