数学Bの「統計的な推測」の第6回として 母平均の推定・母比率の推定 を扱います。(全7回)
今回は解説を含め、全3問を解いてゆきます。
母平均の推定(1)
解答例
標本の大きさ \(100\) は十分に大きいので、標本平均 \(\overline{X}\) は近似的に正規分布 $$N\left(m,\frac{9.8^2}{100}\right)$$ すなわち $$N\left(m,0.98^2\right)$$ に従う。ここで、\(m\) は母平均、\(9.8\) は母標準偏差である。今回の標本平均は \(\overline{X}=500.7\) なので
- \(500.7-1.96 \times 0.98=498.77\cdots\)
- \(500.7+1.96 \times 0.98=502.62\cdots\)
よって、母平均 \(m\) に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[498.8, 502.6]$$但し、単位は \({\rm g}\) である。
母平均の推定(2)
解答例
標本の大きさ \(400\) は十分に大きいので、標本平均 \(\overline{X}\) は近似的に正規分布 $$N\left(m,\frac{0.2^2}{400}\right)$$ すなわち $$N\left(m,0.01^2\right)$$ に従う。ここで、\(m\) は母平均、\(0.2\) は標本標準偏差である。今回の標本平均は \(\overline{X}=10.4\) なので
- \(10.4-1.96 \times 0.01=10.3804\)
- \(10.4+1.96 \times 0.01=10.4196\)
よって、正方形の \(1\) 辺の長さの母平均 \(m\) に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[10.3804, 10.4196]$$但し、単位は \({\rm cm}\) である。ここで、
- \(10.3804^2=107.75\cdots\)
- \(10.4196^2=108.56\cdots\)
これより、正方形の面積の母平均に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[107.8, 108.6]$$但し、単位は \({\rm cm}^2\) である。
母比率の推定
解答例
(1)標本比率を \(R\) とする。 \(\displaystyle R=\frac{1}{6}\) と見做すと
\begin{align}
\sqrt{\frac{R(1-R)}{500}}
=\sqrt{\frac{1}{6}\left(1-\frac{1}{6}\right)\cdot\frac{1}{500}}
=\frac{1}{60}
\end{align}
となる。標本の大きさ \(500\) は十分に大きいので、標本比率 \(R\) は近似的に正規分布 $$N\left(\frac{1}{6},\frac{1}{60}\right)$$ に従う。ここで、
- \(\displaystyle \frac{1}{6}-1.96\times\frac{1}{60}=0.134\)
- \(\displaystyle \frac{1}{6}+1.96\times\frac{1}{60}=0.1993\cdots\)
よって、\(1\) の目が出る確率に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[0.134, 0.199]$$ である。
(2)標本の大きさ \(n\) が大きければ、信頼度 \(95\)%の信頼区間の幅は
\begin{align}
2\times1.96\times\sqrt{\frac{1}{6}\left(1-\frac{1}{6}\right)\cdot\frac{1}{n}}
=2\times1.96\times\frac{1}{6}\sqrt{\frac{5}{n}}
\end{align}
である。これが \(0.07\) 以下になるので
\begin{align}
2\times1.96\times\frac{1}{6}\sqrt{\frac{5}{n}}&\leq0.07\\
2\times1.96\times\sqrt{5}&\leq0.07\times6\times\sqrt{n}\\
28\sqrt{5}&\leq3\sqrt{n}\\
3920&\leq9n
\end{align}
より
\begin{align}
n&\geq\frac{3920}{9}=435.55\cdots
\end{align}
となる。よって、さいころを少なくとも \(436\) 回以上投げればよい。
最後に。
母平均に対して、信頼区間 によって幅を持たせて推定を行うことを「区間推定」と言います。それに対して、母平均を標本平均の値によって \(1\) 点で推定することを「点推定」と言います。
この「推定」とは、抽出された標本を元に、母集団に関する情報を得るという考え方です。これは、統計学の重要なポイントのひとつとなります。
お疲れ様でした。
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