【数学B|母平均の推定・母比率の推定】信頼区間で推定する|統計的な推測6/7

数学IIB

数学Bの「統計的な推測」の第6回として 母平均の推定・母比率の推定 を扱います。(全7回)

今回は解説を含め、全3問を解いてゆきます。

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母平均の推定(1)

問 6.1

ある工場から出荷された塩の袋の中から無作為に \(100\) 個を抽出したところ、質量の平均は \(500.7\,{\rm g}\) であった。質量の母標準偏差を \(9.8\,{\rm g}\) として、\(1\) 袋あたりの質量の平均値を信頼度 \(95\)%で推定せよ。

解答例

標本の大きさ \(100\) は十分に大きいので、標本平均 \(\overline{X}\) は近似的に正規分布 $$N\left(m,\frac{9.8^2}{100}\right)$$ すなわち $$N\left(m,0.98^2\right)$$ に従う。ここで、\(m\) は母平均、\(9.8\) は母標準偏差である。今回の標本平均は \(\overline{X}=500.7\) なので

  • \(500.7-1.96 \times 0.98=498.77\cdots\)
  • \(500.7+1.96 \times 0.98=502.62\cdots\)

よって、母平均 \(m\) に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[498.8, 502.6]$$但し、単位は \({\rm g}\) である。

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母平均の推定(2)

問 6.2

ある正方形の \(1\) 辺の長さを \(400\) 回測定したところ、平均値 \(10.4\,{\rm cm}\)、標準偏差 \(0.2\,{\rm cm}\) であった。この正方形の面積を信頼度 \(95\)%で推定せよ。

解答例

標本の大きさ \(400\) は十分に大きいので、標本平均 \(\overline{X}\) は近似的に正規分布 $$N\left(m,\frac{0.2^2}{400}\right)$$ すなわち $$N\left(m,0.01^2\right)$$ に従う。ここで、\(m\) は母平均、\(0.2\) は標本標準偏差である。今回の標本平均は \(\overline{X}=10.4\) なので

  • \(10.4-1.96 \times 0.01=10.3804\)
  • \(10.4+1.96 \times 0.01=10.4196\)

よって、正方形の \(1\) 辺の長さの母平均 \(m\) に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[10.3804, 10.4196]$$但し、単位は \({\rm cm}\) である。ここで、

  • \(10.3804^2=107.75\cdots\)
  • \(10.4196^2=108.56\cdots\)

これより、正方形の面積の母平均に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[107.8, 108.6]$$但し、単位は \({\rm cm}^2\) である。

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母比率の推定

問 6.3

さいころを投げて、\(1\) の目が出る確率を信頼度 \(95\)%で推定する。

(1)\(500\) 回投げたとき、\(1\) の目が出る確率の信頼区間を求めよ。(小数第\(4\)位を四捨五入せよ。)

(2)信頼区間の幅が \(0.07\) 以下になるには、さいころを少なくとも何回以上投げればよいか。

解答例

(1)標本比率を \(R\) とする。 \(\displaystyle R=\frac{1}{6}\) と見做すと

\begin{align}
\sqrt{\frac{R(1-R)}{500}}
=\sqrt{\frac{1}{6}\left(1-\frac{1}{6}\right)\cdot\frac{1}{500}}
=\frac{1}{60}
\end{align}

となる。標本の大きさ \(500\) は十分に大きいので、標本比率 \(R\) は近似的に正規分布 $$N\left(\frac{1}{6},\frac{1}{60}\right)$$ に従う。ここで、

  • \(\displaystyle \frac{1}{6}-1.96\times\frac{1}{60}=0.134\)
  • \(\displaystyle \frac{1}{6}+1.96\times\frac{1}{60}=0.1993\cdots\)

よって、\(1\) の目が出る確率に対する信頼度 \(95\)%の信頼区間は $$[0.134, 0.199]$$ である。

(2)標本の大きさ \(n\) が大きければ、信頼度 \(95\)%の信頼区間の幅は

\begin{align}
2\times1.96\times\sqrt{\frac{1}{6}\left(1-\frac{1}{6}\right)\cdot\frac{1}{n}}
=2\times1.96\times\frac{1}{6}\sqrt{\frac{5}{n}}
\end{align}

である。これが \(0.07\) 以下になるので

\begin{align}
2\times1.96\times\frac{1}{6}\sqrt{\frac{5}{n}}&\leq0.07\\
2\times1.96\times\sqrt{5}&\leq0.07\times6\times\sqrt{n}\\
28\sqrt{5}&\leq3\sqrt{n}\\
3920&\leq9n
\end{align}

より

\begin{align}
n&\geq\frac{3920}{9}=435.55\cdots
\end{align}

となる。よって、さいころを少なくとも \(436\) 回以上投げればよい。

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最後に。

母平均に対して、信頼区間 によって幅を持たせて推定を行うことを「区間推定」と言います。それに対して、母平均を標本平均の値によって \(1\) 点で推定することを「点推定」と言います。

この「推定」とは、抽出された標本を元に、母集団に関する情報を得るという考え方です。これは、統計学の重要なポイントのひとつとなります。

お疲れ様でした。

AkiyaMath

 
▶︎数学愛好家
▶︎修士(数理学)
▶︎中高教諭専修免許状(数学)
▶︎実用数学技能検定1級
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