数学Aの「場合の数・確率」の単元の勉強を進める中で、
\({}_n{\rm P}_r\) と \({}_n{\rm C}_r\) の違いがわからない。
使い分けもイマイチだし…。
という思った方も多いのではないでしょうか。
本記事は、そんな方々の理解を助け、実際に応用する力をつけることを目指すものです。
“何を区別して数えるか” を明確にする!
この記事で伝えたいこと。
まず、互いに区別可能な \(n\) 個のモノから、重複することなく \(r\) 個を「順番に」選びます。
選ばれた \(r\) 個のモノを、その順番によって区別することにします。
それらを一列に並べた場合は、その選び方は “並べ方” とも言えますね。また、“同時に” と言われたら「選ぶ順番は関係ないんだな」ということになります。
- \(r\) 個を順番に抽出した時点で選んだもの全てを区別しているので、その選び方は
\begin{align}
n\times(n-1)\times\cdots\times(n-r+1)\tag{1}
\end{align}通りです。これが順列(Permutation)の総数 \({}_n{\rm P}_r\) ですね。
- 求めたい値に応じて、区別をする必要がないもの(選ぶ順番が関係ないもの)の個数 \(a,\ b,\ c,\cdots\) を考えます。それらを区別している分だけ場合の数を重複して数えてしまっているので、その区別をなくすために各々の階乗 \(a!,\ b!,\ c!,\cdots\) で上の式 \((1)\) を割っていきます。その選び方は
\begin{align}
\frac{n\times(n-1)\times\cdots\times(n-r+1)}{a!\times b!\times c!\times \cdots}\tag{2}
\end{align}通りです。
- 特別な場合として、選んだものの区別が全く不要なとき(選ぶ順番が全く関係ないとき)は、式 \((1)\) を \(r!\) で割ることになります。その選び方は
\begin{align}
\frac{n\times(n-1)\times\cdots\times(n-r+1)}{r\times(r-1)\times\cdots\times1}\tag{3}
\end{align}通りです。これが組合せ(Combination)の総数 \({}_n{\rm C}_r\) ですね。
つまり
例えば \({}_n{\rm P}_r\) に対して、全てのモノの区別をなくすために \(r!\) で割る ことで \({}_n{\rm C}_r\) が得られます!
逆に \({}_n{\rm C}_r\) に対して、全てのモノの区別をつけるために \(r!\) を掛ける ことで \({}_n{\rm P}_r\) が得られます!
しかし、実際には、上の式 \((2)\) のような「部分的に区別して、部分的に区別しない場合」もあり
- \({}_n{\rm P}_r\) に対して 区別をなくすために階乗で割ったり
- \({}_n{\rm C}_r\) に対して 区別をつけるために階乗を掛けたり
することになります。これらを “目的に応じて自由に扱えること” が大切です。
では、実際に問題を解いてゆきましょう。
問題1(区別してからなくす)
以下、解答の一例を紹介しつつ、考察してゆきます。
(1)全てを区別する。
まず、部員 \(10\) 人から \(6\) 人を順番に選びます。例えば、選ばれた順に
第一走者
↓
第二走者
↓
第三走者
↓
第四走者
↓
第一補欠
↓
第二補欠
と決めてゆくことにします。このとき、「リレーメンバーの決め方」は「 \(6\) 人を選ぶ順番」と一対一に対応することがわかります。よって、求める決め方は $$10\times9\times8\times7\times6\times5$$ すなわち \(151200\) 通りです。
単純に \(n\) 個のモノから \(r\) 個を順番に選ぶようなときは、今回のような 全てを区別した状況だと単純な計算で場合の数を求められる ことがわかります。但し、少し大きな数になることが多いですね…。
(2)全てを区別しない。
次に、リレーメンバー \(6\) 人を選ぶだけで良いときを考えます。まずは先ほどと同様、選ばれた順に
第一走者
↓
第二走者
↓
第三走者
↓
第四走者
↓
第一補欠
↓
第二補欠
と決めることにしましょう。このとき、$$10\times9\times8\times7\times6\times5$$ 通りでしたが、これでは数え過ぎですね。今回は、その \(6\) 人のメンバーであれば順番はなんでも良いのです。その順番を加味していた分だけ多くカウントしているので、その重複を取り除くことを考えます。\(6\) 人の区別を無くせば良いわけですから $$\frac{10\times9\times8\times7\times6\times5}{6\times5\times4\times3\times2\times1}$$ すなわち \(210\) 通りです。
区別しなくて良いときは、まず全てを区別してから、その区別を除くと計算しやすい ですね。
(1)で全てを区別した場合は \(151200\) 通りと出ていますが、その後に約分をしてゆく未来が見えています。しかも “何通りか” を求めているので、計算が正しければ分母は \(1\) になるまで約分が進みます。ですので、全てを区別したときの場合の数としては、途中の $$10\times9\times8\times7\times6\times5$$ を使うと大きな数を扱わずに済むと思います。
(3)区別するモノと、しないモノ。
最後に、補欠 \(2\) 人だけ順番を問わないときを考えます。やはり(1)と同様、選ばれた順に
第一走者
↓
第二走者
↓
第三走者
↓
第四走者
↓
第一補欠
↓
第二補欠
と決めることにしましょう。これは $$10\times9\times8\times7\times6\times5$$ 通りでしたが、選ばれた順に応じて補欠 \(2\) 人を第一・第二と区別していた分だけ多くカウントしています。その重複を取り除くわけですから $$\frac{10\times9\times8\times7\times6\times5}{2\times1}$$ すなわち \(75600\) 通りです。
やっていることは(2)と同じです。区別しなくて良いモノがあるときは、まず全てを区別してから、その区別を除くと良いです。ただ、今回は全ての区別を除くわけではなく、補欠のみ区別しなければ良いです。ですので、(1)の $$10\times9\times8\times7\times6\times5$$ を \(6!\) ではなく \(2!\) で割っています。
問題2(あとから区別する)
これは少し応用を要する問題ですが、考え方に触れておきたい問題です。
以下、解答の一例を紹介しつつ、考察してゆきます。
まずは区別せず選ぶだけ。
横一列に並んだ椅子に、左端から $$\fbox{1},\fbox{2},\fbox{3},\cdots,\fbox{16},\fbox{17}$$ と番号を付けておきます。また、\({\rm A}\) さん、\({\rm B}\) さん、\({\rm C}\) さんの座る椅子の番号を小さい順に \(x\),\(y\),\(z\) とおきます。
\({\rm A}\) さん、\({\rm B}\) さん、\({\rm C}\) さんの座る椅子の番号をそれぞれ \(a\),\(b\),\(c\) とおくと、この \(3\) 人を区別していることになります。
一方、今回のように「小さい順に」とか「大きい順に」とかの条件の下で \(x\),\(y\),\(z\) を設定すると、\(3\) 人を区別していない状態になります。実際に、「\(3\) 人が座る椅子の “組合せ”」と「条件を満たす番号の組 \((x,y,z)\)」が一対一に対応していることがわかります。
さて、この問題の条件を \(x\),\(y\),\(z\) を用いて書き直すと
\begin{align}
\begin{cases}
x\geq2\\
y-x>2\\
z-y>2\\
z\leq16
\end{cases}\tag{P}
\end{align}となりますね。これを、まとめてみると…
\begin{align}
2\leq x<y-2<z-4\leq12\tag{Q}
\end{align}となります!
これより、
- \(3\) 人が座る椅子の “組合せ”
- 条件 \(({\rm P})\) を満たす整数の組 \((x,y,z)\)
- 条件 \(({\rm Q})\) を満たす整数の組 \((x,y-2,z-4)\)
が一対一に対応することがわかります。よって、\(2\) から \(12\) までの \(11\) 個の整数の中から異なる \(3\) 個を選べば良いので、\(3\) 人が座る椅子の組み合わせは \({}_{11}{\rm C}_3\) 通りです。
選んだものを区別する。
さて、\({}_{11}{\rm C}_3\) 通りの座席の組み合わせがあることがわかりました。その席に \(3\) 人が座るには、それぞれの組合せに対して \(3!\) 通りの座り方があります。
以上より、求める座り方は $${}_{11}{\rm C}_3\times3!=11\times10\times9=990$$ 通りになります。
条件を少し複雑にすると…。
今回の問題では、座席の組み合わせさえ選んでしまえば、\({\rm A}\) さん、\({\rm B}\) さん、\({\rm C}\) さんは自由に座れるので \(\times3!\) で座り方が求まりました。
では、座席の組み合わせが選べたとして「\({\rm A}\) さんが \({\rm B}\) さんより左にいる」という条件を課したらどうなるでしょうか?
考え方-その1
\(3\) 人の座る位置関係(左から数えた順番)のみを考えると
\({\rm ABC}\),\({\rm ACB}\),\({\rm CAB}\)
の \(3\) 通りがあります。よって、求める場合の数は $${}_{11}{\rm C}_3\times3=\frac{11\times10\times9}{2!}=495$$ 通りとなります。
考え方-その2
\({\rm A}\) さんが \({\rm B}\) さんより左にいる場合の数と右にいる場合の数は等しく、それを合わせたものが全てです。条件 \(({\rm Q})\) の段階から順番を全て考慮して \({}_{11}{\rm P}_3\) 通りとしておくと、求める場合の数は $$\frac{{}_{11}{\rm P}_3}{2}=\frac{11\times10\times9}{2}=495$$ 通りとなります。
この考え方の途中で現れた「\({}_{11}{\rm P}_3\) 通り」が問題2の最短の答えだと思います。ひとことで言えば
「 \(3\) 人の間を \(2\) 席ずつ詰めておき、
その状態で座ってもらい、
互いの間に空席を戻す。」
といったところでしょうか。今回は、問題1とは異なる視点で解くために、組合せ \({\rm C}\) から攻めてみました。
順列と組合せのまとめ。
順列の総数 \({}_n{\rm P}_r\) や組合せの総数 \({}_n{\rm C}_r\) の一般的な式を、与えられた公式として認識してしまうと、その使い方を覚えようという気持ちばかりになってしまいます。
高校数学で「場合の数」を計算するとき、また、それを用いて「確率」を求めるとき、\({}_n{\rm P}_r\) や \({}_n{\rm C}_r\) を使いこなせることはポイントになると思います。さらに、「集合」の分野でも重要ですね。
ただ、理解なく公式を覚えて
『並べる・並べ方』とあったら \({\rm P}\) で、
『選ぶ・選び方』とあったら \({\rm C}\) だ!
のような見分けるコツ(?)を紹介することはしたくなかったため、今回のような構成で記事を執筆しました。
初めて公式などを目にした際は「どうやって使うのか?」だけでなく「なぜそうなるのか?」という疑問を持つことが成長には不可欠であると思います。今回のように、自分の頭を使って「なぜか」がわかることは「公式の使い道」を理解することを力強くサポートしてくれるはずです!
※ 数学Iの多項式の展開・因数分解について、演習をしたい方は以下の記事を参考にしてみてください。
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