今回は、高校数学でも分野を問わず現れる多項式の計算のうち、多項式の因数分解 の計算を扱いたいと思います。
一部に数学IIの内容も含みますが、数学Iの内容を中心とし、有理数の範囲で因数分解を行います。また、係数が全て整数であって、互いに素ではなかった場合、それらの最大公約数を括り出すこととします。
前半の問題1から問題5が基本編、後半の問題6から問題10が応用編です。基本編と応用編、それぞれに解答例も用意してあります。ぜひ、お役立てください!
基本編
問題1:共通因数をくくり出す
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(2ac+5bc\)
(2)\(12x^3y^2-16x^2y^3\)
(3)\(ax-ay+2az\)
(4)\(2ax+bx-4cx\)
(5)\(5x^3-30x^2+50x\)
(6)\(20x^2yz+16xy^2z^2-24xyz\)
(7)\((a+b)x-(a+b)y\)
(8)\((a-2b)xy+(2b-a)y^2\)
(9)\((x+y)^2-(x+y)z\)
(10)\(2ab(x+y+z)+b^2(x+y+z)^2\)
因数分解とは、与えられた多項式をいくつかの多項式の積で表すことです。多項式どうしではなく、よりシンプルな型である
(単項式)×(多項式)
への因数分解が基礎となります。
例えば、\(m(x+y)\) を展開するときは分配法則を用いて $$m(x+y)=mx+my$$ としていました。これの逆の操作なので、因数分解する際には
分配法則によって共通する因数をくくり出す
ことを常に意識します。
この操作は一度に終える必要はないので、正確に共通因数をくくり出してゆきましょう。
問題2:二次式(基本)
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(x^2-7x+12\)
(2)\(x^2-8xy-20y^2\)
(3)\(a^2+3ab-28b^2\)
(4)\(3x^2z+18xyz+15y^2z\)
(5)\(x^2+2xy+y^2\)
(6)\(4a^2-4a+1\)
(7)\(3as^2t^2+18ast+27a\)
(8)\(x^2-25\)
(9)\(4a^2-9b^2\)
(10)\(98-32x^2y^2\)
二次式を因数分解すると、次数に着目することで
(一次式)×(一次式)
の型になることがわかります。ここでは、そのふたつの (一次式) の一次の項が同一の場合を考えます。
例えば、\((x+a)(x+b)\) を展開すると
$$(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab$$
となります。これを逆向きに計算するので、
- 一次の項の係数 \(=a+b\)
- 定数項 \(=ab\)
となるような定数 \(a\),\(b\) を見出だせれば良いです。整数の範囲で \(a\) と \(b\) を見つけ出すことを考えると、積が定数項になることから絞り込み、和が \(x\) の係数になることを確認してゆくのがよいと思います。
特に、「\(b=a\)」のときを考えると、因数分解の公式と呼ばれるもののひとつ $$x^2+2ax+a^2=(x+a)^2$$ を得ます。定数項が平方数 \(a^2\) のときは、もとの数 \(a\) が \(2\) 個で \(2\) 乗になっているか確認するとよいでしょう。
また、「\(b=-a\) 」ときを考えると、同じく $$x^2-a^2=(x+a)(x-a)$$ を得ます。\(2\) 乗の差になっているときは、もとの数の和 \((x+a)\) と差 \((x-a)\) の積になります。
いずれの場合も、共通因数をくくり出す意識は常に必要だと思います。くくり出さなければ絶対に解けないということはないですが、分解を進めることで各公式の使い所がわかりやすくなります。
問題3:二次式(たすきがけ)
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(2x^2-3x+1\)
(2)\(2x^2+5x+2\)
(3)\(3x^2-10x+3\)
(4)\(3x^2+5x-2\)
(5)\(4x^2+9x+5\)
(6)\(5x^2-13x-6\)
(7)\(6x^2+7x-3\)
(8)\(8x^2+6x-9\)
(9)\(6x^2+x-12\)
(10)\(12x^2+8x-15\)
二次の項の係数が平方数でないときは、一次の項が異なるふたつの (一次式) への分解を考えます。
例えば、\(2x^2-7x-15\) を因数分解してみましょう。まず、
\(2x^2-7x-15=\ \)(一次式)×(一次式)
のように、どのような形に分解するのか意識しておきます。ここで、
- 左辺の二次の項 \(2x^2\) は右辺の一次の項どうしの積から得られるので \(x\) と \(2x\) が候補です。\(-x\) と \(-2x\) でもよいですが、ふたつの因数を共に \((-1)\) 倍するだけなので、\(x\) と \(2x\) で十分です。
- 左辺の定数項 \(-15\) は右辺の定数項どうしの積から得られるので \(1\) と \(15\)、または、\(3\) と \(5\) が候補です。符号は後で考えます。
この時点で、
\(2x^2-7x-15=(2x )(x )\)
ここまで書けていて、残りの定数項は以下のように埋まります。
- もとの定数項 \(-15\) の符号がマイナスなので、ふたつの定数項は異符号です。つまり、\(1\) と \(15\)、\(3\) と \(5\) による差を考えます。(プラスなら、同符号、和を考えます。)
- その際、ただの差(和)ではなく、\(x\) と \(2x\) をそれぞれ作用させて \(-7x\) を作ります。今回の場合 $$x\times 3-2x\times 5=-7x$$ です。
- ここでかけ合わせたもの同士は同じ括弧内に入らないので $$2x^2-7x-15=(2x+3)(x-5)$$ を得ます。
二次の係数と定数項の積への分解で絞り込み、その組み合わせも有限なので、それら一個一個の “積の和” を確かめることになります。
例えば、\(2x^2+5x+2\) を因数分解するときに
- \(x^2\) の係数が \(2\) なので \(1\) と \(2\)
- 定数項が \(2\) なので \(1\) と \(2\)
を考えます。余裕が出てきたら、元の多項式の係数に奇数が含まれるので
\((2x+2)\) が因数になることはないだろう…
と気づきます。このように、柔軟な視点でそのパターンを絞り込み、素早く処理できるようになりたいです。
問題4:三次式(基本)
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(x^3-1\)
(2)\(x^3+8\)
(3)\(27x^3-1\)
(4)\(27x^3+8\)
(5)\(125a^3+27b^3\)
(6)\(64a^3-216b^3\)
(7)\(x^3+3x^2+3x+1\)
(8)\(x^3-6x^2+12x-8\)
(9)\(27x^3+27x^2+9x+1\)
(10)\(8x^3-36x^2+54x-27\)
基本的な三次式の因数分解では、展開にも通じますが、一次の因数を上手く使うとよいです。
この範囲では、展開を通して学んだ変形 $$x^3+a^3=(x+a)(x^2-ax+a^2)$$ や $$x^3+3ax^2+3a^2x+a^3=(x+a)^3$$ を着実に使ってゆきたいです。必要であれば、\(a\) を \(-a\) に置き換えた $$x^3-a^3=(x-a)(x^2+ax+a^2)$$ や $$x^3-3ax^2+3a^2x-a^3=(x-a)^3$$ も頭に入れておきましょう。
最初に述べた、一次の因数を上手く使うということを説明しておきます。
例えば、\(x^3-8\) の因数分解を上記の公式を前提とせず行おうとすると
- \(x=2\) とすると \(x^3-8=0\) なので、因数定理より $$x^3-8=(x-2)\times(二次式)$$ と分解できる。
- 最高次の係数と定数項の、各々の積を考えると $$x^3-8=(x-2)(x^2+\fbox{ }\ x+4)$$ まで形が決まる。
- \(x^2+\fbox{ }\,x+4\) に対して \(x-2\) をかけたものを筆算のようにイメージすると
\begin{align}
&x^3+\fbox{ }\,x^2+4x\\
&\quad-2x^2-2\,\fbox{ }\,x-8
\end{align}となる。 - \(x\) をかけたものの “位” がひとつ上がり、\(-2\) をかけたものとの和で、\(x^2\) と \(x\) の係数を \(0\) にするので、因数 \(x^2+\fbox{ }\,x+4\) の係数は $$1\ \to\ 2\ \to\ 4$$ のように等比数列をなす。
以上のように、一次の因数をかける筆算をイメージすると、\(0\) になる係数から隣り合う係数の比がわかります。
例えば、\(x^3+1\) を因数分解しようとすると \((x+1)\) を因数に持つことが因数定理からわかります。\((x+1)\) をかけると \(x^2\) と \(x\) の係数が \(0\) になるような \(2\) 次式ですから、各係数の絶対値は等しく、符号が交互になっていることが想像できます。実際、“位” をずらして足し合わせるだけなので
\begin{align}
&x^3-x^2+x\\
&\quad +x^2-x+1
\end{align}が \(x^3+1\) となりますね。
この公式で現れる二次の因数 \(x^2\pm ax+a^2\) の判別式は $$(\pm a)^2-4a^2=-3a^2$$ なので、\(a\) が実数の定数なら、実数の範囲で因数分解が終わっています。
問題5:高次式(因数定理)
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(x^3-6x^2+11x-6\)
(2)\(x^3-7x+6\)
(3)\(x^3-x^2-10x-8\)
(4)\(2x^3+7x^2+7x+2\)
(5)\(2x^3-3x^2-11x+6\)
(6)\(4x^3+4x^2-5x-3\)
(7)\(6x^3+13x^2+x-2\)
(8)\(x^4-7x^2-6x\)
(9)\(x^4-9x^2+4x+12\)
(10)\(x^4-25x^2-60x-36\)
今回は有理数の範囲で因数分解を進めています。有理数係数の多項式は、適切なくくり出しによって
(有理数)×(整数係数の多項式)
の形にできます。そこで、整数係数の多項式の因数分解について考えます。
三次式の場合、次数の低い多項式の積に分解できるなら、必ず
(一次式)×(二次式)
の形で書けます。\(4\) 次式の場合は
(一次式)×(三次式)
もしくは
(二次式)×(二次式)
の形で書けます。
このように、一次の因数を見つけることは、因数分解を進める有効な方法であるわけです。
有理数係数の一次の因数を見つけることは、因数定理より、もとの多項式の有理数根を見つけることと同じです。もとの多項式の \(x\) に有理数を代入して \(=0\) になるかを確かめます。その候補が
- 定数項の約数
- それを最高次の係数の(正の)約数で割った数
です。
例えば、\(x^3-6x^2+11x-6\) を因数分解する場合は
- 定数項 \(-6\) の約数である \(\pm1\),\(\pm2\),\(\pm3\),\(\pm6\)
を代入して確認します。最高次の係数が \(1\) なので、これで十分です。
他にも、\(4x^3+4x^2-5x-3\) を因数分解する場合は
- 定数項 \(-3\) の約数である \(\pm1\),\(\pm3\)
そして
- それを最高次の係数 \(4\) の約数で割った数 \(\pm\frac{1}{2}\),\(\pm\frac{3}{2}\),\(\pm\frac{1}{4}\),\(\pm\frac{3}{4}\)
を代入して確認します。ここで、\(\pm1\),\(\pm3\) は最高次の係数 \(4\) の約数 \(1\) で割った場合にも再登場しますが、省略しました。
基本編の解答例
ここまでに紹介した問題の解答例です。見たい問題をクリック・タップしてご覧ください。(数式が長く、スマホなどの画面に収まっていない場合、横にスクロールすることで数式の続きが見れます。)
応用編
問題6:置き換えの工夫
以下の式を因数分解せよ。
(1)\((x+2)^2+5(x+2)+6\)
(2)\(3(2x-1)^2-5(2x-1)+2\)
(3)\((x^2+x)^2+2(x^2+x)+1\)
(4)\((x^2-3x)^2-2(x^2-3x)-4\)
(5)\((x+y)^2+2x+2y-3\)
(6)\(9x^2-4y^2+8y-4\)
(7)\((x^2+3x-3)(x^2+3x-5)+1\)
(8)\((x-1)(x-2)(x-3)(x-4)-24\)
(9)\((x-z)^3-(y-z)^3\)
(10)\((x+y+1)^4-(x+y-1)^4\)
問題7:最低次の文字について整理
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(2a^2-6ab-a-3b-1\)
(2)\(a^3b+2a^2-ab-2\)
(3)\(2x^2-2xy+3xz-3yz\)
(4)\(6x^2+3xy-14xz-yz+4z^2\)
(5)\(x^3-x^2y-xz^2+yz^2\)
(6)\(x^3z-x^2-xy^2z+y^2\)
(7)\(ab+a+b+1\)
(8)\(xy+3x-2y-6\)
(9)\(10ab-2a+5b-1\)
(10)\(8xy+6x-20y-15\)
問題8:二元二次式、対称式・交代式
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(x^2-xy-2y^2-3y-1\)
(2)\(6x^2+5xy+y^2-x-y-2\)
(3)\(x^2+3xy-4y^2+x+14y-6\)
(4)\(2x^2+5xy-3y^2-7x+7y-4\)
(5)\(6x^2-3xy-3y^2-8x+14y-8\)
(6)\(1-a-b-c+ab+bc+ca-abc\)
(7)\(a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2\)
\(+2abc\)
(8)\(a^2b+ab^2+b^2c+bc^2+c^2a+ca^2\)
\(+3abc\)
(9)\(a^2(c-b)+b^2(a-c)+c^2(b-a)\)
(10)\(a^3(c-b)+b^3(a-c)+c^3(b-a)\)
問題9:複二次式
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(x^4+5x^2+4\)
(2)\(x^4-5x^2+4\)
(3)\(x^4+3x^2-4\)
(4)\(x^4+x^2+1\)
(5)\(x^4+4\)
(6)\(9x^4+25\)
(7)\(x^4+3x^2y^2+4y^4\)
(8)\(x^4-9x^2y^2+16y^4\)
(9)\(9x^4-10x^2y^2+y^4\)
(10)\(25x^4+11x^2y^2+4y^4\)
問題10:その他
以下の式を因数分解せよ。
(1)\(x^4+12x-5\)
(2)\(x^5+x+1\)
(3)\(a^3+b^3+c^3-3abc\)
(4)\(x^3-y^3-z^3-3xyz\)
(5)\(u^3+3uv+v^3-1\)
(6)\(x^6-y^6\)
(7)\(a^4+b^4+c^4\)
\(-2a^2b^2-2b^2c^2-2c^2a^2\)
(8)\((a^2-1)(b^2-1)-4ab\)
(9)\(x(x+2)(x+4)\)
\(-y(y+2)(y+4)+xy(x-y)\)
応用編の解答例
ここまでに紹介した問題の解答例です。見たい問題をクリック・タップしてご覧ください。(数式が長く、スマホなどの画面に収まっていない場合、横にスクロールすることで数式の続きが見れます。)
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