【京都大学-理系】第4問「相加・相乗平均と単調性を利用する。」解答・解説[過去問 2023年度]

大学入試数学IIIC
京都大学 第4問(2023年度 前期理系)

次の関数 \(f(x)\)(\(-1\leq x\leq 1\))の最大値と最小値を求めよ。

\begin{align}
f(x)&=e^{-x^2}+\dfrac{1}{4}x^2+1+\frac{1}{e^{-x^2}+\dfrac{1}{4}x^2+1}
\end{align}

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【解答例】

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まず、関数 \(g(s)\) を
\begin{align}
g(s)&=e^{-s}+\frac{1}{4}s+1&&(0\leq s\leq1)
\end{align}と定めると、\(e<3\) より
\begin{align}
g^\prime(s)
&=-e^{-s}+\frac{1}{4}\\
&\leq-\frac{1}{e}+\frac{1}{4}\\
&<0
\end{align}である。よって、関数 \(g(s)\) は \(0\leq s\leq1\) において単調に減少し $$g(1)\leq g(s)\leq g(0)$$ であることがわかる。

次に、\(s=x^2\) とおくと \(0\leq s\leq1\) である。よって、\(t=g(s)\) とおくと
\begin{align}
f(x)&=t+\frac{1}{t}
\end{align}と書ける。よって、関数 \(f(x)\) の値域は、関数
\begin{align}
h(t)&=t+\frac{1}{t}&&(g(1)\leq t\leq g(0))
\end{align}の値域と一致する。

さて、\(t\geq g(1)>1\) より
\begin{align}
h^\prime(t)=1-\frac{1}{t^2}>0
\end{align}である。よって、関数 \(h(t)\) は $$g(1)\leq t\leq g(0)$$ において単調に増加する。

以上より、関数 \(f(x)\) は

  • \(\displaystyle t=g(0)=2\) のとき、最大値 $$2+\frac{1}{2}=\frac{5}{2}$$
  • \(\displaystyle t=g(1)=\frac{5e+4}{4e}\) のとき、最小値 $$\frac{5e+4}{4e}+\frac{4e}{5e+4}$$

をとる。

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考察と感想

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関数 \(f(x)\) の値、特に値域について考える問題です。式の形から、上手く合成関数と見做して、段階的に見通し良く分析してゆくと手間がないですね。

相加平均と相乗平均の大小関係を思い浮かべると、解答中の \(t\)(つまり、関数 \(f(x)\) の中の $$e^{-x^2}+\dfrac{1}{4}x^2+1$$ をカタマリと見て \(t\) とおいたもの)は常に正なので、最小になると嬉しいのが $$t=\frac{1}{t}$$ すなわち $$t=1$$ のときです。

そのような \(t\) を与える \(x\) は存在しないですが、

  • \(t>1\) の値が \(1\) に近いほど、\(t\) と \(\displaystyle \frac{1}{t}\) のバランスが取れて、\(h(t)=f(x)\) の値は小さく
  • \(1\) から遠いほどバランスが崩れて \(f(x)\) の値が大きく

なることが推測できます。

あとは \(t\) の値を調べるにあたっての手間の問題だと思います。\(x^2\) が共通して現れているので、今回の解答例のように \(s\) でさらに置き換えることで楽ができると良いと思いました。

その「バランス」をちゃんと扱いたいなら、関数 \(\displaystyle h(t)=t+\frac{1}{t}\) の正の変数 \(t\) を \(t=e^z\) などとおきます。(\(2^z\) など、底は他の数でも良いです。)その関数を \(H(z)\) とおくと
\begin{align}
H(z)
&=e^z+\frac{1}{e^z}\\
&=e^z+e^{-z}
\end{align}となります。ここで、\(e^z=e^{-z}\) すなわち \(z=0\) のとき最小値 $$H(0)=1+1=2$$ をとる偶関数であることがわかります。

AkiyaMath

 
▶︎数学愛好家
▶︎修士(数理学)
▶︎中高教諭専修免許状(数学)
▶︎実用数学技能検定1級
▶︎統計検定2級
 
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